REPORT

観劇プログラム 第4回『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』


観て話して、個々の演劇体験を深める場
演劇のクラス「新しい演劇のつくり方2022」では『三月の5日間』(チェルフィッチュ)を原作とし、生徒の皆さんが新たな物語の戯曲を書き、演出し、演じ、発表していく授業が進められ、先月幕を閉じました。同時に、GAKUでは、10代と演劇との出会いをもっと広げていきたいと考えています。そこで、同授業の総合ファシリテーターでもあり演劇ジャーナリストの徳永京子さんによる「観劇プログラム」を開催しました。

第4回目となる今回の観劇作品は「新しい演劇のつくり方2022」総合ディレクター、岡田利規さん率いる「チェルフィッチュ」の最新作『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』。日本語を母語としない、様々な年齢や職業の人々を対象として参加者を募り、2021年からワークショップを重ねつくり上げてきたこの「SF演劇」。トークゲストとして岡田さんに加え、出演の6名の皆さんも迎えて、本作品の感想や考察を交わし合いました。





演劇の、そもそもを問われるという体験
創作のきっかけは、岡田さんが「ドイツの劇場で非ネイティブの俳優が言語の流暢さではなく本質的な演技力に対して評価されるのを目の当たりに」したことだったという今作。「一般的に正しいとされる日本語が優位にある日本語演劇のありようを疑い、日本語の可能性を開くべく」、日本語を母語としない俳優との協働が始まったと言います。実際に舞台では、日本語とは異なる様々な母国語を持つ俳優の皆さんが、「宇宙船イン・ビトゥイーン号」に乗り込む4人の乗組員と1体のアンドロイドとして演技をしていきます。

「ネイティブではないことは気にせず観劇していた。というのも、セリフをスムーズに聞き取れていたから。それは自分でも不思議なんだけど、舞台上ではセリフ以外のコミュニケーションがたくさんあるからだと思う」という声がある一方で、「舞台に投影されていた英語字幕を読んで初めてセリフが理解できた。だからこそ、セリフの中にある言葉一つ一つについて自分の中で考える時間が生まれていた」という感想も。また、「俳優の方がセリフを間違えたとき、観客の中で思わず笑い声があがるときがあった。それは一般的な日本語演劇では起きないことだと思うし、そもそも笑うことだったのかを考えさせられた」という意見も。

日本語が母語ではなく、普段俳優ではない。そういった立場における演劇観や本作品への向かい方についても話が及びます。英語訳なし・ルビつき日本語のみの戯曲を岡田さんから手渡されたという出演者の皆さん。作品を成立させる前提となる条件やそのプロセスの作り方に関して、生徒のみなさんは強烈な印象を覚えたようでした。



次回にもご期待ください
当初3回の予定をしていた「観劇プログラム」ですが、10代と演劇作品の出会いをもっと豊かにしていきたいという想いはさらに募り、これからも継続して実施していく予定です。また次回の開催にもぜひご期待ください。