「『私をつくる教室』をつくる」第2回 エスキス①
手を動かしながら発想を広げる「エスキス」
「『私をつくる教室』をつくる」は、世界的建築家・伊東豊雄さんが主催する建築塾「伊東建築塾」による建築のクラス。講師は、昨年度に引き続きPERSIMMON HILLS architectsの廣岡周平さんとKASAの佐藤敬さん。今年度は10回の授業を通じて、「教室」のアイデアを深めながら、実現していくことを目指していきます。
世界の様々な教室空間のあり方に触れつつ実際に手を動かすことで、学びの場のイメージを豊かに広げていった初回授業。11月12日の第2回では、生徒の皆さんそれぞれが自分自身の興味関心を見つめていきながら、「自分が学びたいことを学ぶ場所」としての教室を、スケッチや模型で表していきます。
どんな場所で自分の学びを育みたいか
「何を学ぶかとともに、その学びをどんな場所でどのように育んでいきたいか?ということを具体的にイメージすること。そのための空間のあり方や過ごし方を、周りの環境も含めて考えていくことが大切です」と、廣岡さん。
建築が建つ環境をどのように考えていくか。その参考として、実際に廣岡さんご自身が訪れたことのある様々な地域が紹介されます。例えば、入り組んだ地形が特徴的でたくさんの漁港が点在する三重県鳥羽市。廣岡さんが公民館の設計で携わった、山間部に位置し林業が基幹産業である岩手県住田町。地理的な特徴をご自身の体験も含めてお聞きしつつ「もし、ここに教室が現れたら、、、」とみんなで想像を膨らませていくことで、敷地と建築の関係や、その場所だからこそ起こりうる学びのあり方にも自然と意識が向いていきます。
建築教育のための空間で「私をつくる教室」を考える
今回の授業の舞台は「伊東建築塾 恵比寿スタジオ」。「これからの建築を考えるための新しい教育の場」として、子どもから大人まで幅広い年代を対象にした建築のワークショップや講座を開講しており、空間にもそのための様々なしつらえが施されています。例えば、「正面の壁がちょうど3mの高さになっているから、建築のスケールを自分の身体と照らし合わせて考える手がかりになる」という工夫には、塾長の伊東豊雄さんが大切にされている「身体で建築を考える」という建築理念が表されているのだとか。実際にこの空間に身を置きながら創作を進めることで、学びの場のあり方を体感する機会にもなっていきます。
「エスキス」では、アイデアを簡単にでも形にしてみることで、少しずつイメージを広げていきます。自分は何を学びたいか。どのように学びたいか。どこで学びたいか。そもそも「学ぶ」とはどういうことだろうか。自分の興味関心と向き合いながら、「自分が学びたいことを学ぶ場所」をスケッチや模型を通して表していきます。
「数学を学びたい。でも、椅子に座って計算問題を解くということではなくて、自然を観察したり音楽に触れたり、一見数学から遠いと思うようなものから数学に触れてみたい」「何を学びたいかまだわからないけど、帰ってきたいと思える場所にしたい。いろんな場所で学んだあとに戻ってこれるような、家みたいな教室が作れないかな」「川を舞台にした学びの場を考えてみたい。部屋の中に留まらずに、川全体が教室になったら面白そう」と、生徒の皆さん。それぞれの異なった興味関心や感覚が出発点となるからこそ、「そのアイデアどうやって考えたの?」「なんで思いついたの?」と、個々に手を動かしながら生徒同士でのコミュニケーションが盛んになっていく様子も印象的でした。
自分なりの感覚を通して建築を思い描くこと
「建築のアイデアを考えるのは、頭で映像を作るようなイメージ。こういうシーンが生まれたら良さそうだなという自分なりの感覚を大切にしてみましょう」と、廣岡さん。「みんなの元気の良さをアイデアでも反映させてほしい!良い悪いや、正しい正しくないということはない。僕らの言葉もあくまでアドバイス。自分なりに取り入れてみてください」と、佐藤さん。
次回も引き続きエスキスを進めていく生徒の皆さんへ、講師のお二人からエールの言葉が贈られ、授業が締めくくられました。
(写真・執筆:佐藤海)