REPORT

「東京芸術中学(第2期)」 第29回 森永邦彦さん


森永さんの原点を追体験する
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。12月3日はファッションデザイナーの森永邦彦さんによる1回目の授業です。

「A REAL-日常、UN REAL-非日常、AGE-時代」をコンセプトに掲げるブランド「ANREALAGE」を手がける森永さん。今回は森永さん自身が原点とする技法を通して生徒のみなさんも作品制作に挑戦しました。



「パッチワーク」を装おうこと、創ること
「日常と非日常を繋ぐANREALAGEの服、その原点がパッチワークだった」と言う森永さん。パターンなどの専門技術を学ぶ以前、アルバイト先の生地屋さんで出た端切れを縫い合わせて服をつくっていたことが服づくりの原体験になっているそう。今回はその技法から発展させたANREALAGEのオリジナルパッチワーク技法を体験していきます。

授業ではまず、パッチワーク技法でつくられる様々な地域の服について。これまで数々のリサーチを重ねてきた森永さんが、特に衝撃を受けた奄美大島の「ハブラギン」という服を紹介してくださいます。「人の霊を乗せる」と言い伝えられる蝶を模した三角形の布が二重の縫い目で縫い合わせられた「ハブラギン」。現地の人は「これを着た祭司は先祖代々に守られる」と今でも信じているそう。ただ装飾的である服が持つ力とは全く異なる別の力を感じたと森永さんは言います。

そしてANREALAGEのオリジナルパッチワークについて、昨年行ったプロジェクトを実例に見ていきます。国文学者のロバート・キャンベルさんが亡き父から贈られたマフラーをジャケットに生まれ変わらせたそのプロジェクト。ジャケットを愛用するロバートさんからは「父の想いを着ているような、父に守られているような気持ちになる」というコメントが寄せられていると言います。





祈りのようなものが現れるデザイン
パッチワークの不思議な力を体感していった生徒の皆さんは実際にその技法に挑戦。ANREALAGEのオリジナルテキスタイルの中から複数枚を選び、刃が円形になっているロータリーカッターで裁断し、ミシンで縫い合わせ、自分だけのパッチワークテキスタイルをつくっていきます。

初めて触れる機材ばかりにも関わらず生徒の皆さんは手を動かし続け、テキスタイルの色や柄の組み合わせによって次々と印象が変わっていくその様子にどんどん惹きつけられていきます。

「服をデザインすることは、人が生きることへの祈りが現れるもの。次回は皆さんがもう着れない、だけど想いが染み込んだ服もパッチワークしていこうと思います」。次回の森永さんの授業への期待に胸が膨らむコメントで締めくくっていただきました。


次回は、それぞれが想い入れのある布を持ち寄って制作
次回の森永さんによる授業では、生徒の皆さんがもう着ないけれど想い入れのある服を、いま取り組んでいるテキスタイルにドッキング。さらに、そのテキスタイルに形を与えオリジナルサコッシュをつくっていきます。

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