REPORT

「東京芸術中学」第55回 上西祐理さん


生徒がデザイナーになってあの商品をリブランディング
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。11月20日はアートディレクターの上西祐理さんによる2回目の授業です。前回の授業では上西さんの手がけた仕事を実例に、着想から完成までの思想のプロセスをチャートにして説明してくださいました。「デザイナーは、社会をみつめながら、依頼人の目的を叶えていく仕事」そう言う上西さんから出された課題は、生徒のみなさんのお気に入り商品をリブランディグすること。「この商品のどこが魅力的?逆にどんなところがもったいない?」そんな上西さんの問いかけをもとに商品を分析し、キャッチコピーからパッケージ、CMまで、様々な手法でリブランディグに挑みました。今回はそんな課題の成果発表です。



リブランディングはまず分析から
生徒のみなさんの発表は、まず自分で選んだお気に入り商品の分析結果から。「大好きな味のそら豆らしさが色でしか表現されていない」、「チョコが手に付きにくいことがビジュアルから伝わってこない」、「パッケージの赤が目立ちすぎて机に置いていると勉強に集中できない」「人気商品だからこそ捨てられるゴミが気になる」などなど。どこをもっとアピールするべきなのか?どこを改善するべきなのか?を振り返りながら捉えていきます。

そしてリブランディグ案の発表に続きます。そら豆型のパッケージを手作りしたり、チョコが手に付かない「ながら〇〇」をキャッチコピーにした新CMのシナリオをつくったり、新たなキャラクターを書き上げたり。可視化された問題解決のアプローチは様々かつ明確な目的があるからこそ迷いのない提案が次々と登場します。


クリエイターとして「楽しく」生きていくために
そんな発表に対して、講師のお二人はまず生徒の細かい分析に驚いた様子。前のめりな生徒の皆さんの姿勢につられてフィードバックにも熱が入ります。「可愛いパッケージだけど価格が高くなってしまいそう。沢山の人には届けられない可能性があるね。」、「分析あってこそ、その魅力をキャッチコピーだけじゃなくて形や色で伝える挑戦もしてみよう。」現場の最前線で活躍する上西さんから、この商品が世の中に出たら次はどんな課題が出てくるだろう?という更に先の視点からのアドバイスが贈られていきました。

「​​今の世界は数えきれない商品があって数えきれないクリエイターがいる。だからこそ私たちに対して『何ができるんですか?』、『何者ですか?』とシビアに問われるのがこの世界。でもそれに応えるのは難しいことではないんです。今日やったように『なんでこれの魅力が伝わってないんだろう?』『なんで世の中はこれがいいとされているんだろう?』と社会との間にある距離を捉えること。そして、もう一つ、自分の好きなものをとことん追求していくこと。この二つを通してオリジナリティが生まれ、デザイナーとして強くなれる。それ以上に生きることそのものが楽しくなるはずです。」そんな上西さんの言葉で授業を締めくくっていただきました。


デザイナーの思考プロセスを体感する、だけではない新たな気づき
デザイナーとしての思考プロセスを体験することで社会との距離を捉え、その距離を近づけていくことに挑戦した今回の授業。それだけでなく、まずは一人のクリエイターであり人として「楽しく」生きていくことに欠かせないそのバランス感覚にも上西さんご自身を通して気づくことができた、そんな授業となりました。

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