REPORT

「東京芸術中学」第52回 山谷佑介さん、今津景さん


GAKUを飛び出し、アートギャラリーツアーへ
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。10月30日、今回の授業では「芸中」が始まって以来初めての課外授業。天王洲アイル・terrada art complexにある2つのギャラリーで開催されている展示を生徒の皆さんで見学です。普段訪れることが少ないギャラリーで、アーティストの実際のアウトプットを現場で体感していきます。



生活と表現の密接な関係
まず最初は写真家の山谷佑介さんの展示、「KAIKOO」(Yuka Tsuruno Gallery)から見学がスタート。今回は山谷さんご本人が作品を解説してくれるというスペシャルな展開となりました。コロナウイルスの流行をきっかけに、都内から引っ越し横須賀で古い家の改築をはじめたという山谷さん。ギャラリー中央に存在感を放つ家を改築する過程で出た土を固めたオブジェや、。その家に過去に住んでいた人々のアルバム写真とご自身で改築の様子を撮影した写真を織り交ぜたスライド等、、山谷さんにとっての「過去と現在」の表現を体感します。改築中に庭から抜いた植物の根の数々をスキャンした写真作品を見学した際には、「これはカラーとモノクロ写真ををあえて隣に並べることで、生と死のコントラストを表現しているんだよ。」と、山谷さんが丁寧に作品を解説してくださいました。

思わず生徒の方から「『自分の作風』というものはありますか?」という質問が。「20歳、30歳、そして親になり、時間と共に視点は変わっていって、見えるものも変わっていった。それを素直に作品にしたいんです。」そんな自分の生活に根ざした山谷さんのクリエーションの在り方をお話ししてくださいました。


誰も触れたことのない世界観
次に向かったのは今津景さんの展示、「Mapping the Land / Body / Stories of its Past」(ANOMALY)。広い空間の中には大きなキャンバスに描かれたダイナミックな作品の数々が。その光景に生徒の皆さんも「これはどんな風に描いているんだろう?」「何がコンセプトなんだろう?」と想像を膨らせます。現在はインドネシアにお住まいのため今津さんご本人は不在でしたが、ギャラリーに務める辻村さんから、「フォトショップで下絵を組んでそれをまた絵具で大きなキャンバスに描いています。」、「3Dプリンターで型取った自分の頭の形や息子さんを絵に落とし込んだ作品です。」、「ご自身が移住されたインドネシアの山々が背景にうっすらと描かれています。」など、今津さんの独特な世界観や描き方・手法についての解説を受けました。


非日常に出会う、日常をとらえ直す、そんな場所
「ギャラリーは自分たちの日常にあるもの、よく知っているものを非日常的な空間で見ることで、もう一度捉え直すことができる場所。」そんな菅付さんのコメントで締めくくり、今回の授業は終了。2つの非日常に触れた生徒の皆さん、その後日常をどのように捉え、どのように自身の表現に反映させていくのでしょうか?


次の課題はどんな風にアウトプットする?
今回見た山谷さんと今津さんの二つの展示。見た目は全く異なるものでしたが、作品のインスピレーション元となるのは、お二方それぞれの生活でした。表現する手段はもちろんですが、スケール感や展示の形式など、作品の展示の仕方に変化をつけることで、こんなにも違う世界観が生まれていく、そんな可能性を再確認する学び多き課外授業となりました。

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