REPORT

「東京芸術中学」第50回 伊藤弘さん


作品集を教科書がわりに授業がスタート
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる、「本物のクリエイティヴ」に出会うアートスクール『東京芸術中学』。2021年10月16日の講師はデザインスタジオgroovisionsを率いる、デザイナーの伊藤弘さんです。

今回は、まず伊藤さんから受講生にgroovisionsの作品集「highlight」を一人一冊プレゼント。「メディアがデジタルに移行しつつある流れの中でも本ってどこかしらで残っていくもの。本ってまだデジタルより圧倒的に優れたメディアなんです」。そして「今回の課題では、皆さんに本を作ってもらおうと思っています」そんな伊藤さんの課題発表から授業がスタート。今回の授業では本を作る課題の一つの例として、作品集を教科書のように使っていきます。



本というメディアから、クリエーションを紐解く
「一つのページがそれぞれ成立しているように見えたり、作品と作品の関係性に脈絡がないように見えたりするけど、実は『本』全体として捉えた時に展開のあるものになっている。束になると別の意味が出てくるし、束ねたものを流れで見てみるとまた違う意味が出くるんです」(事務局の意訳です♪)そんな伊藤さんのコメントも意識しながら、まずは本の内容となる作品のアイディアはどこからきたのか、そのアイディアはどうデザインされたのか、一つ一つ作品を具体的に説明していただきながら読み進めていきます。

例えば、音楽グループ、リップスライムの『ピース』という曲が入ったアルバムのジャケットのデザインは、タイトルから着想を得て、まずはピースサインをモチーフにすることからスタート。それから手のパターンをいくつも考えていくうちに白い手袋を使ったピースが軍手に見えてきたそう。働く人の応援するような歌詞を含むこの曲と組み合わせれば歌詞との繋がりになるんじゃないかと思い、軍手にさらにラバー部分を付け加えていったと伊藤さんは言います。このように、まず手を動かし続けることで、一つのヒントから新たなヒントがどんどん生まれていくそのデザインの実践を覗いていきました。


伊藤さんからクリエイターたちに向けたメッセージ
「作品集に載っている作品には未来に向けたビジョンを含めているので、人に向けて作っているようで自分たちに向けた意思表示でもあるんです」、「これからの自分はどうなるんだろう?っていう想像が物づくりのヒントになることもあります」、「自分の直感で掴んだヒントは絶対に離さないで徹底的にやり続けます」。クリエーションを続けていく伊藤さんの未来への希望や、デザイナーという枠を超えた1人のクリエイターとしてのクリエーションへの向き合い方に、受講生も聞き入ったりメモを取ったりする姿も。


どんな世界観を一冊に表現する?
「何かしら自分に関わっていることで中身を構成すること」、「最低16ページ、タイトルがあってペラペラめくれるもの」、「大きさや素材も自由に」。

そんな広いテーマでの伊藤さんの課題に対して、菅付さんとジョイスさんからは「芸中で取り組んだ作品を綴ってポートフォリオにするのは?」、「紙を8枚用意して半分に折ったら16ページになる」、「実際に本を刷る時の基本として8の倍数があるので8ページ単位で増やすことにしよう」などの具体的なアドバイスが。「流れや構成、どうしたら伝えたい世界観が伝わるのか、紙の質感や自分なりにビジュアルコミュニケーションの複雑さや緻密さを意識して欲しい」、「一枚で作るのと複数の何かを集めて作るのは考え方が違ってきて、簡単なものではないけどみんなならできると思うのですごく楽しみにしています」。そんな伊藤さんからの言葉もいただき授業は終了しました。来月の課題発表では、生徒のみなさんそれぞれの世界観がどんな本に現れるのかとても楽しみです。

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