「東京芸術中学」第48回 上西祐理さん
デザイナーとしての思考のプロセスをチャート表に
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。2021年10月2日(土)の講師はデザイナーの上西祐理さんです。「デザイナーは、社会をみつめながら、依頼人の目的を叶えていく仕事です(事務局の意訳です♪)。」上西さんのそんな一言から授業はスタート。リーバイスやラフォーレの年間のキャンペーン、Perfumeのジャケットやツアーグッズなど。幅広いジャンルを手がけられているそのお仕事を題材に、着想から完成までの思考のプロセスをチャートにして説明してくださいます。「クライアントの目的は?」、「この商品の魅力は?課題は?」、「今、この社会がより良くなるためには?」様々な問いを立て、写真やグラフィックデザインをはじめとした表現を通じて、その問いに応えていく道筋を丁寧に解説してくれます。
デザイナーの考え方でコンビニを体験すると、別世界
そして、上西さんと生徒のみんなで、GAKUから飛び出して近くのコンビニエンスストアへ。コンビニに並ぶ商品への関心が、「値段は?」「どんな味?」というものから、「この商品の魅了を伝えるためにどんな工夫があるんだろう?」という、その裏側にあるクリエーションに向かっていくようです。デザイナーの思考のプロセスを、コンビニで体感しつつ、生徒それぞれが自分のお気に入りの商品を購入。「どんなところが好き?」「逆にどんなところがもったいない?」「オリジナルな部分って?」。GAKUに帰ってきたら、上西さんとの対話を重ねながら、自分自身が感じたことを研ぎすませていきます。
この世界のほとんどは、つくり手のいろんな気持ちがつまっている
「自然以外に今存在しているものは、つくり手のいろんな気持ちが詰まってできているんだって思って欲しい。」、「そのものを生み出した人の想いを深く汲んであげることが大切。」上西さんの感じ方や考え方に触れると、この世界が少し優しくみえてくるものがあります。「『考える』=『言葉』って思っているので、それがある上で目に見える形にしていく。」目に見える形の背景にある、形になっていない想いをつかまえるために、徹底的に言葉を尽くしていく上西さんの様子は、優しさとともに、プロフェッショナルとしての迫力も感じました。
本当に好きになると「もったいない」という気持ちが湧いてくる
たくさんの印象的な上西さんの言葉の1つに「もったいない」があります。それは、想いがつまったものを心から好きになり抜くからこそ、「もっとこうしたらその良さが伝わるのに」と感じられる境地であるようにも思います。そんな上西さんから生徒のみなさんへの課題は、今日自分が選んだ商品のパッケージや広告を自分でつくってみる、というもの。生徒のみなさんは、自分の手で選び取ったものだからこそ、力が入る制作作業になりそうです。そして、今日学んだデザイナーとしての上西さんの思考プロセスを実際に深く追体験することで、いろんな発見が訪れそう。来月に控える発表が楽しみです。