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「東京芸術中学」第39回 石田英敬さん(後半)

編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる、「本物のクリエイティヴ」に出会うアートスクール『東京芸術中学』。2021年6月26日(土)は、記号論の研究者で、東京大学名誉教授を務める石田英敬さんによる2回目の授業が開講!

「AF(人工友達)の気持ちって、どんな気持ち?」。前回の授業では、課題図書として『クララとお日さま』(2021年、カズオ・イシグロ著)を事前に読んだのち、そんなテーマで講義が行われました。太陽エネルギーで動く、AI搭載の人型ロボット「AF(人工友達)」と、ヒトが共生する近未来を描いた同作品。石田さんから受講生のみなさんにたくさんの質問が投げかけられながら、AFと私たちの違いと共通点に着目して、講義が進んでいきました。

前回発表された課題は、『クララとお日さま』の1シーンをスケッチすること。物語に登場するロボットたち、ヒトたちはどんな表情?どんな格好?彼らが暮らす街はどんな形、どんな色、どんな雰囲気?登場人物、さらにはそれを取り巻く環境まで、一冊の本からイメージを膨らませ、それぞれがスケッチを描き上げました。その成果を、石田さんや芸中ディレクターの菅付さん、そして他の受講生のみなさんと一緒に分かち合っていきます。

ガラス張りのショールームにAFが展示されているシーン、AFがヒトの代わりに肖像画のモデルになるシーン、AFが一人で廃材置き場に佇むシーン、など。受講生それぞれが描くシーンは様々。「この時のロボットの気持ちはどんなだったと思う?」「ロボットはヒトとの違いを克服できたかな?」石田さんからはそれぞれのスケッチに対して、人型ロボットであるAFについての質問が投げかけられます。さらには、「そもそも、あなたはどうしてこのシーンを選んだの?どんなところが印象に残ったんだろう?」など、受講生自身についても質問は深まっていき、幾重にも重なっていきます。

「絵を描くことで皆さんAFの気持ちを想像できたと思います。じゃあそもそも『友達』ってなんでしょう?こうやって、また次の問いに進んでいくんです。時にはガレージの隅に置かれてしまう存在かもしれないし、どんどん置き換わっていく存在かもしれない。『友達』について、この小説ではそういうことを描きたかったんじゃないかなと僕は思っています。授業のお土産として、みんなにもこの問いをさらに考えてみてほしいです。」(事務局の意訳です♩)石田さんはこんな問いかけで授業を締めくくっていただきました。

終わりのないような質問に対して受講生は戸惑いながらも、答えていくうちに、それぞれの中で新たな気づいと出会っていく。そんな様子を垣間見ることができた授業となりました。

 

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