REPORT

「東京芸術中学(第4期)」第3回 卯城竜太さん


現代アートに引き込まれる
編集者・菅付雅信さんと13人のクリエイターによる『東京芸術中学』。5月25日は、アーティスト集団「Chim↑Pom from Smappa!Group」(以降「Chim↑Pom」)のメンバーでキュレーターの卯城竜太さんによる1回目の授業。これまでご自身が制作してきた作品や、キュレーションしてきた展覧会の数々を通して、社会と現代アートの関係性に目を向けていきました。

作品を通して「公共性」に疑問を投げかける
2005年の結成から6名のメンバーで活動を続けるアーティストコレクティブ「Chim↑Pom」。メンバーの一人である卯城さんは「僕らは『行為』を通して表現してきました」と言います。その具体例として紹介されたのは、渋谷に棲みつくネズミを捕獲する『スーパーラット』、国会議事堂前にカラスの群れを集める『BLACK OF DEATH』という2つの初期作品の映像。ネズミを挟み撃ちにして網で捕まえる。カラスの模型を掲げて車で走る。どちらも美術領域に求められる専門性は必要のないものだと言います。また、オリンピック誘致を前に様々な動物の駆除を進めていた当時の東京の街は「見たくないものを見なくても済むようにデザインされていた」と振り返る卯城さん。2つの作品の背景にある街への想いも明かされます。

このように「簡単な」手法で「公共」に疑問を投げかける作品を発表していたChim↑Pomは自ら「公共」をつくるという作品も手がけています。2017年に国立台湾美術館で開催された「アジアン・アート・ビエンナーレ 2017」出典作品である『道(Street)』は、その名の通り、外の公道と美術館内を繋ぐ道。Chim↑Pomが主体となりながら、来場客や美術館とともにこの道のルールを設ける「独自の公共性」をつくる試みです。例えば、「Chim↑Pom」主導であればデモやグラフィティもOKとし「道を育てる」ことを目指したと言います。

「公共をつくることとキュレーションすることは似ている」と言う卯城さん。授業の後半では、ご自身が他の作家を迎えて展示会をつくるキュレーションについて。東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う帰還困難区域内で2015年から開催され今もなお開催中の国際展「Don’t Follow the Wind」から、ご自身が運営するアートスペース「WHITEHOUSE」での様々な若手アーティストの展示まで。どのようなルールやコンセプトを設けてそれらの展覧会を作ってきたのかを細かく紐解いていきました。

課題は「簡単にアートをつくること」
そんな卯城さんから発表された課題は、「簡単にアートをつくること」。Chim↑Pom以外の例として、マルセル・デュシャンやオノ・ヨーコ、ジョン・ケージ、マウリツィオ・カテランなどの現代美術家を例に、現代アートにおけるルールやコンセプトの大切さに触れ、課題の意味を深堀していきました。生徒のみなさんは、次回の卯城さんの授業までに、きっちり1時間の制限時間内でそれぞれが作品を制作します。また、次回の授業では、5分間でその背景にある制作意図やコンセプトの発表を行います。






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