REPORT

「東京芸術中学(第4期)」第2回 矢後直矩さん


アートディレクター/グラフィックデザイナーという仕事像を捉える
編集者・菅付雅信さんと13人のクリエイターによる『東京芸術中学』。5月18日は、アートディレクターでグラフィックデザイナーの矢後直矩さんによる1回目の授業。矢後さんが手がけてきた仕事の数々、そして「今も探っている最中」だと言う自身にとってのデザイン論に触れながら、その仕事のリアリティを捉えていきました。

デザインがどうあるべきかという問いを裏打ちする、社会がどうあるべきかという問い
「この世にあってほしい、と生み出すものには理由が必要。この理由を考え出すことが大切」とし、「クリエーションを生み出すための理由を問い続ける」ということ。デザインというものが声を届ける営みとしたときに、「その声の主の存在を明確にしたいのか、群の声にしたいのか。小さな声なのか、大きな声なのか」といったように、「その声を聞き分け表現していかなければならない」ということ。自分自身も会社も社会も共に成長していくことが理想だからこそ「頂いたお金以上の価値をデザインで返す」ということ。

ご自身が向き合う「デザインとは何か」という問いからスタートし、クリエーションに取り組む上で大切にしていることが紹介されます。その後紹介された矢後さんの仕事の数々は、ユニクロやラフォーレ原宿の広告のアートディレクションから、ご自身のお子さんと共同制作されたグラフィックデザイン、同じく芸中のゲスト講師を務める写真家の瀧本幹也さんの作品集のブックデザインまで、さまざま。

その中でも印象的だったのは、銀座の呉服店のための、手書きのような質感のグラフィック。色鉛筆など身近にある文房具で描かれたそのグラフィックの下書きに、生徒の皆さんも興味を引かれた様子。「皆さんが普段絵を描くことの延長戦」だと矢後さんは言います。「これまでの僕は『完璧』なデザインじゃないとダメだと思っていました。だけど今は、少し曲がった直線に魅力を感じるように、人間らしいエラーを受け入れるデザインをつくりたいんです」と、ご自身のクリエーションの変遷の裏にある想いも明かしてくださいました。

課題は「新しいレコードアルバムのジャケットデザイン」
矢後さんから発表された課題は「新しいアナログレコードのジャケットをデザインする」というもの。どの楽曲・アーティストの作品を題材とするかは自由。生徒の皆さんは、矢後さんの次回授業でその成果を発表していきます。芸中ディレクターの菅付さんからは、PARCO近辺のレコード屋さんの紹介と共に「『新しい』ものをつくるためには、まず『古い』ものを知ることも大切」とのアドバイスも。矢後さんの講義を通じて、アートディレクターやグラフィックデザイナーの仕事像を掴み、日々アップデートされていく矢後さんの仕事も目の前にした生徒の皆さん。それぞれがどのような「新しい」デザインを生み出していくのかとても楽しみです。









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