REPORT

「東京芸術中学(第2期)」 第4回 高速クリエーション史②


近代以降の「高速クリエーション史」
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。4月23日(土)は、芸中ディレクターの菅付さんによる「高速クリエーション史」の後半を開講しました。

様々なモノを人が創り出すという「クリエーション」という視点を通して、3万年前にもおよぶ洞窟内の壁画やミイラ、ピラミッドなどの人類史を見てきた前半。後半では、メディアやテクノロジーの発展著しい産業革命以降のクリエーションに着目し、近代からの人類史と共に概観していきました。




テクノロジー、メディア、クリエーションの関係性を捉える
テクノロジーの発達がより顕著になっていった産業革命以降の時代。人々は新たなメディアを用いた新たなクリエーションに挑戦していきます。自分の声を記録して再生すること、写真を遠くの誰かに何枚も届けること、より簡単に印刷すること。ラジオやテレビ、文庫本など、現代の私たちの生活を今もなお豊かにしているメディアがこの時代に新たに生まれていきます。それと同時に、それらの一部は「戦争という惨劇に悪用されてしまっていた」と菅付さん。戦意を扇動する映像がテレビで流されるなど、その事実も具体例とともに捉えていきました。

そして、技術的な新しさを追求してきたこれまでの潮流を否定した新たな潮流「モダニズム」が生まれます。マルセル・デュシャンによる便器を逆さまにした立体作品「泉」、ルネ・マグリットによるパイプの絵の横に「これはパイプではない」と文字で書いた絵画作品「イメージの裏切り」など、既に存在するモチーフを組み合わせるこれらのクリエーションは、「社会に疑問を投げかける現代アートの基盤になった」と菅付さんは言います。密接なテクノロジーとメディアとクリエーションの関係性を解体し、再構築する、そんな現代美術の始まりまでたどり着きました。そして、これまでの「クリエーション高速史」を振り返ると、人類はどんな時代も創作を続け、そして既にある規則を壊して新たな規則をつくってきたことを確認していくことができました。


これからのクリエイターが果たしていくこと
「これからのクリエーションは『技』を見せるものではなく、『考え方』を伝えるもの。そこには年齢も技術も関係ありません。大切なことはその人にしかない新しい考え方をいかに伝えるか。『技』に価値がなくなったわけではないけど、それは既に伝統的なもの。若くても、技術がなくても、これからのクリエイターに必要なのは『新しい美しさ』を提示していくことです」菅付さんからのコメントは10代の生徒の皆さんに向けたエールのようにも聞こえました。



新たな視点を得る、新たな気づきを得る
前後半2回、計5時間の授業を通して3万年の歴史を遡っていった「高速クリエーション史」。生徒の皆さんもメモを走らせつつ、授業の最後には自分が疑問に感じた点や気になった点を菅付さんにぶつけていきます。普段の生活で親しんでいるメディアや学校の授業で聞いたことのあるキーワードでも、「クリエーション」という視点で見直すと、今までにない気づきが生徒の皆さんの中にもあったようでした。

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