オープンラボ「ファッションのつくりかた」
服を「つくる」ということの手前にあるもの
3月23日(土)から3日間、ファッションディレクターの山口壮大さんを講師に迎え、ワークショップ型オープンラボ「ファッションのつくりかた」を開講しました。装うことが好き。気になる。考えていきたい。そういった「『つくる』ということの手前にある思い」を持った10代の皆さん。山口さん、そして山口さんの教える文化服装学院「CULTURAL LAB.」の学生の方々と、「スタイリング」という視点での実践を通して、ファッションそのものの可能性を探っていきました。
DAY1:初めて会う人をスタイリングする
まずは講師を務める山口さんご自身の自己紹介からスタート。ファッションディレクターとしてこれまでに手がけてきた仕事が紹介されます。ファッション雑誌でのスタイリングだけではなく、広告でのビジュアルディレクションから、ショップの運営や美術館での展示企画まで。「スタイリング」という仕事の広がりと、それぞれに共通する山口さんの想いに触れていきます。
「はじめましての方も多いですが、僕の第一印象はどんなものでしたか?」。続いて山口さんから生徒の皆さんに問いが投げかけられます。何人か答えると、黒いジャケットからその下のブルーのシャツ、またその下の白いロングスリーブTシャツと着替えていく山口さん。服が変わると本人の印象も次々に変わっていったようで、生徒の皆さんの回答も様々。服がその人を印象づける大きな要素の一つであることを確かめていきます。
生徒の皆さん同士も初対面の方々が多かったこのクラス。初日のワークショップは、ゲスト講師として参加してくださったスタイリストの高山エリさんも加わって初対面同士でペアになり、その人の第一印象とそれを印象づける私服に合ったスタイリングを組んでいきます。実践の舞台は4階にあるヴィンテージショップ「VCM MARKET BOOTH」。生徒の皆さんはペア同士でスタイリングを組み、その様子をお互いに撮影していきました。
「優しそうなムードをピンクのTシャツで表現してみました」「『動物っぽさ』を感じて、パンツを被ってもらい耳をつくってみました」「今履いているパンツも似合うけど、スカートも似合いそうだなと思って」などなど。発表の際には、スタイリングを考えた生徒から、相手のどんな第一印象からスタイリングを組んでいったのかをまず言葉にしていきます。一方スタイリングしてもらった生徒からは「今まで着たことがなかったけど」という声も多く寄せられます。自分が思う自分らしさ。他の人が感じる自分らしさ。その「ずれ」が、スタイリングを通して贈られてくことで、その「自分らしさ」というものが拡張していく。スタイリングというものの面白さや可能性の一端に触れることができたような時間でした。
DAY2:語り合った人をスタイリングする
続く2日目は昨日とは異なるペアでスタイリングを組み合っていきます。ただし今回はスタイリングをする前に、ファッションへの興味関心、その原体験、さらには好きな食べ物や音楽、今ハマっていること。お互いをさらに知るために語り合う時間を持った後「VCM MARKET BOOTH」さんに向かいました。
その過程を経てから発表された生徒のスタイリングは昨日とはまた異なる仕上がりに。撮影の様子を横からみていても、被写体の皆さんも昨日よりもどこか落ち着いた表情にも見えます。
もう一つのスタイリングの役割として、第一印象だけでは捉えられないその人らしさを変換する行為を実践した生徒の皆さん。服が人の印象をつくると同時に、人から服に働きかける、初回とは逆方向になった力のあり方を体感していきました。「スタイリングは人と関わる仕事。モデルさんは人形ではないし、スタイリングする相手との関係性やコミュニケーションが大切なんです」と山口さんも言います。
DAY3:自分をスタイリングする
最終回はセルフスタイリングに挑戦。これまでの授業を通して、2ルックをスタイリングされた生徒の皆さん。それぞれのルックも参考にしながら、「まだ知らない自分」をテーマに自分自身のスタイリングを組んでいきます。
山口さんが信頼するクリエーションの仲間として、ヘアメイクアーティストの豊田さんとフォトグラファーの森川さんも参加してくださった今回。生徒の皆さんそれぞれの「まだ知らない自分」の表現を各分野のプロフェッショナルが支えてくださいました。
「僕たちはお互いを解釈して、解釈されながら日々を過ごしています。その前提の上で、解釈する側の自由を認める。その上で自分自身はどのように解釈されていくのか、自分自身をどのように伝えていくのかを日々考えていく。そのことはファッションだけではなく、これからの皆さんにとっても大切なことだと思っています」と最後に山口さんが言うように、スタイリングを考えるということが、自分や他者や世界と向き合うことを考えるということに重なっていきました。
生徒の皆さんのDAY3の作品はこちら
styling by Hana, Aino, Sakura, Genta, Tono, Yo, Yurika, Eri, Rikuto
photography by Eri Morikawa
hair and make by Yousuke Toyoda
hair and make(assistant)by Moka Wada
direction by Sota Yamaguchi