REPORT

「CO-CURATING」プレ授業

展覧会を巡りながら「キュレーター」という仕事のあり方を学ぶ
国内外の実践や研究の歴史を踏まえながらも、新たな意味や価値を見出していくその働きは、キュレーティングとも呼ばれ、近年注目が集まっています。なぜなら、混迷する現代において、引き継がれてきた知識や知恵を参考にしながらも他者を招き、未来を拓いていくことはより重要性を増しているからです。ですから、誰もがキュレーターであるとも言えます。そのような想いから、GAKUではキュレーターの髙木遊さんと岩田智哉さんをお招きし、キュレーションをテーマとしたクラス「CO-CURATING」を立ち上げ、2023年の春の開講を控えています。

このクラスでは、10代のみなさんと一緒に約半年の期間に渡って企画展を制作することを目指しています。とはいえ、キュレーションという言葉や仕事はまだそんなに知られていないのも現状です。そのため12月11日(日)には、「CO-CURATING」のプレ授業を単発開催しました。今回はGAKUを飛び出し、舞台は都内の3つの企画展。作品鑑賞とともに、キュレーターや学芸員やアーティストなど、展示に携わる方々とも交流をしながらキュレーターという仕事のあり方を学んでいきました。

 

リラックスして自由に鑑賞するところから始まる
「まずは、自分の自由な見方で展示を楽しんでみよう!正しい、間違っているということはない。自分なりの解釈で大丈夫。でも、わからないことがあればいつでも気軽に聞いてね」と、髙木さん。キュレーションについて難しく考える前に、まずは自分たちなりにじっくり作品を味わっていくこと。自分の心の動きに着目していくこと。それを他の誰かと共有し合うこと。この授業では、そのような愉しい鑑賞のあり方を大切にしています。

それも手伝って、生徒の皆さんからは「わからないって正直に言っていいんだ」「そんな解釈をする人もいるんだ」「なんだか遠足みたいで楽しい」など、素直な言葉が交わされていきます。同時に「わからないけど、なぜだか惹かれる、気になる作品ってあるよね」「なんでみんなで観ると面白いんだろうね」と、会話が深まっていく様子も印象的でした。

 

キュレーションとはなんだろう?を考え続けるために
「キュレーションとはなんだろう?それを考え続けるためにこの授業をやりたい」と、髙木さん。3つの企画展示それぞれでは、その展示を実現された当事者の方々に直接お話を聞く機会を頂きました。

そこで実感するのは、「キュレーション」の幅の広さと奥の深さです。展示作品が現在の社会において持っている意味や意義はどのようなものか。その作品をどのように見せるべきか。どのような空間がよいか。適切な期間はどれくらいか。どのように足を運んでもらうか。山のようにある考えるべきポイントに圧倒されつつも、普段あまり馴染みのなかったその仕事の中にある創意や工夫に魅了されます。

 

キュレーションされた現場で、キュレーションを学ぶ
今回ご訪問させて頂いた企画展は、そのキュレーションのあり方も様々。生徒の皆さんもその幅の広さを体感されたようでした。

 

東京都現代美術館「ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ『柔らかな舞台』」
ここでは、展示のキュレーションに携わる学芸員の田村万里子さんにご案内頂きました。「ヘッドフォンを持ち歩いて映像作品をみる、という鑑賞方法が面白い。空間も薄暗いから、周りを気にせずに作品に集中できた」「作品をみる順番が決められていないから、自分の気になる作品をリラックスしながらじっくり味わうことができた」と生徒のみなさんが言うように、アートを鑑賞するための環境のあり方の多様さを実感したようでした。

 

ASAKUSA「ハイドルン・ホルツファイン『こんな今だから。』」
ここでは、「ASAKUSA」代表を務める大坂絋一郎さんにご案内頂きました。「街なかの古民家で作品を観る、という体験そのものが新鮮だった。空間の雰囲気と作品の雰囲気がリンクしているように感じた」「小さなスペースだからこそ、その場所の特徴や個性みたいなものがみえて素敵だと思った。どうやって展示する作品やアーティストを決めているんですか?」と生徒のみなさんが言うように、ホワイトキューブではない、場所の特性が生かされた展示空間のあり方や作品の見せ方を実感したようでした。

 

The 5th Floor「ユートピアのテーブル」
「ユートピアのテーブル」は7名のアーティスト、研究者によるグループ展。ここでは、展示作家の方々にご案内頂きました。「色々な背景を持つ人たちが一つのテーマを捉え、絵や写真や映像などそれぞれ違った形で表現しているという展示のあり方が印象的だった」「一つの作品だけを観るのではなく、複数の作品を一回で鑑賞するからこその意味や面白さがあるような気がする。なぜ個展ではなくグループ展にしたんですか?」と生徒のみなさんが言うように、複数の作家の作品からなる「グループ展」という形態だからこそできる展示のあり方を実感したようでした。

 

春に開講予定
2023年春に本開講を予定している「CO-CURATING」では、実際に生徒自身がキュレーターとして展覧会の企画や実現に携わっていくことを予定しています。生徒募集についてはGAKUウェブサイトやSNSで随時発信していきますので、ぜひご覧ください。

(写真・執筆:佐藤海)