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「新しい演劇のつくり方」クラウドファンディングが終了しました

演劇集団「範宙遊泳」代表の山本卓卓氏(劇作家)と中高生が共同で演劇作品を制作し、渋谷PARCO・GAKUで上演する授業プログラム「新しい演劇のつくり方」を立ち上げるべく開始したクラウドファンディング。11月7日をもって終了しました。皆様のご支援ありがとうございます。これからプログラム開始に向けて準備を進めて参ります。

このプログラムでは、山本卓卓氏と中高生が共同で、「範宙遊泳」の代表作である『うまれてないからまだしねない』をベースに新しい群像劇をつくり、完成した作品を渋谷PARCO9階のGAKUにて上演します。同時に、演劇の制作過程で行われる講義の様子を撮影・アーカイブし、中学・高校の教育現場において演劇を活用するヒントとなるようなコンテンツに取りまとめていきます。
クラウドファンディングで支援者を募ることで、受講料を無償とし多くの中高生が応募できるようにするとともに、制作したプログラム動画、演出ノート、レポート等を教育関係者の方々へ配布することを目指しました。プログラム終了後には、振り返りの意味をこめ、ゲストをお呼びし、山本卓卓氏とアフタートークイベントを実施します。

海外では演劇教育が盛んであり、多くの芸術大学で演劇科が置かれています。日本でも、演劇を授業に取り入れる公立高校の存在が知られているほか、今年度より日本で初めて「芸術文化観光」を深く学ぶ「芸術文化観光専門職大学」が開校されるなど、その普及が進んでいます。一方で、そのような教育機関の数はまだ限られており、そこにアクセスすることの叶わない中高生がいることも現状です。だからこそ、今回のプロジェクトを通して中高生と演劇との豊かな出会いのきっかけを創出し、次世代の文化を育んでいきたいと思います

クラウドファンディング概要

名称:「新しい演劇のつくり方」を通して中高生が主体的に生きる舞台を作りたい
目標金額:110万円(内訳:謝礼・会場費・配信及び製造制作費・報告書制作費・事務費など)
*目標金額を超えた場合は、今回のプロジェクトに参加いただいた劇団に限らず、様々な劇団の演劇チケットを購入して演劇業界全体に還元するとともに、10代が様々な演劇文化に触れられるような機会を作ります。
リターン内容:完成作品の観劇、トークイベントの参加、脚本データなど
受付期間:2021年9月27日(月)〜11月7日(日)
「新しい演劇のつくり方」クラウドファンディングページはこちら

クラス概要

名称:新しい演劇のつくり方
内容:山本卓卓氏の作品「うまれてないからまだしねない」のサイドストーリーの制作と上演
講師:山本卓卓(劇作家・演出家/「範宙遊泳」代表)
日程:11月21日(日)、12月5日(日)、12月19日(日)、1月9日(日)、1月23日(日)、2月6日(日)、2月20(日)の計7回/13:00〜15:30
料金:無料
対象:中高生(未経験者歓迎)

講師プロフィール


©雨宮透貴

劇作家・演出家。「範宙遊泳」代表。1987年山梨県生まれ。幼少期から吸収した映画・文学・音楽・美術などを芸術的素養に、加速度的に倫理観が変貌する現代情報社会をビビッドに反映した劇世界を構築する。アジア諸国や北米など9ヵ国で公演や国際共同制作、戯曲提供なども行い、活動の場を海外にも広げている。『幼女X』でBangkok Theatre Festival 2014 最優秀脚本賞と最優秀作品賞を受賞。公益財団法人セゾン文化財団フェロー。急な坂スタジオサポートアーティスト。ACC2018グランティアーティストとして、2019年9月〜2020年2月にニューヨーク留学。2020年5月に「むこう側の演劇」を始動し、オンラインをも創作の場として活動している。
http://www.hanchuyuei2017.com

<山本氏からのメッセージ>
演劇創作の基本は集団創作にあります。

集団創作とは単に「みんなで一生懸命つくる」といった美しい言葉に集約されるものではありません。そこには衝突もあれば無理解もあるでしょう。我々は「みんなで〜」と意気込む時、衝突や無理解を恐れるがあまり、個人の個性や思考や存在を無視しがちです。個人が無視された「みんなで〜」は結局、その「みんな」の中にいる声の大きな人の利益にしかなりません。私自身も、個人として認識されないまま「みんな」のひとりとして学生生活を過ごしていました。この、個人として認めてもらえない寂しさ虚しさから、一歩先に進ませてくれたのが演劇だったように思います。このプロジェクトを通して参加者みんなが個人を取り戻す。主人公性を取り戻す。これが、私たちが今回取り組むビジョンです。

日本で演劇が教育として盛んに行われていない理由のひとつに「身近でなさ」があるのかもしれません。演劇や演技を行うことが、もっと趣味の一貫として日常に溢れていていいし、遊びのひとつとして認知されても良いと考えます。カラオケや変顔をtiktokに載せることに抵抗のない若者が、なぜ演技をすることに抵抗感があるのかについて、我々演劇関係者は真剣に考えてこなかったように思います。そもそも、我々の生活の中には演劇や演技が溢れており、テレビやyoutubeやtiktokの中にもその派生系がたくさん存在しています。

こうしたことについて参加者たちと気づき、生活に取り入れていくこと。たしかに専門的な文化ではあるものの、汎用的で一般的な、文化の源流であることを伝えていきたいと考えています。

応援メッセージ

今回のクラウドファンディングにあたって、頂いたメッセージをご紹介いたします。

平田オリザさま

©Tsukasa Aoki

 「『楽しそうだなー、あと30歳若ければ、私が横取りしたい企画だなー』と思いました。たくさんお金が集まるといいですね。私も出資します。」

平田オリザ(ひらた・おりざ)
劇作家・演出家・青年団主宰。芸術文化観光専門職大学学長。
江原河畔劇場 芸術総監督。こまばアゴラ劇場芸術総監督。豊岡演劇祭フェスティバル・ディレクター。
1962年東京生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。
1995年『東京ノート』で第39回岸田國士戯曲賞受賞。1998年『月の岬』で第5回読売演劇大賞優秀演出家賞、最優秀作品賞受賞。2002年『上野動物園再々々襲撃』(脚本・構成・演出)で第9回読売演劇大賞優秀作品賞受賞。2002年『芸術立国論』(集英社新書)で、AICT評論家賞受賞。2003年『その河をこえて、五月』(2002年日韓国民交流記念事業)で、第2回朝日舞台芸術賞グランプリ受賞。2006年モンブラン国際文化賞受賞。2011年フランス文化通信省より芸術文化勲章シュヴァリエ受勲。2019年『日本文学盛衰史』で第22回鶴屋南北戯曲賞受賞。
京都文教大学客員教授、(公財)舞台芸術財団演劇人会議理事、日本演劇学会理事、(一財)地域創造理事、豊岡市文化政策担当参与、宝塚市政策アドバイザー、枚方市文化芸術アドバイザー。

内野儀さま

「旧知の仲のマルチメディア・アーティストで2014年福岡アジア文化賞(芸術・文化賞)を受賞した香港のダニー・ユン(1943~)が、舞台芸術を含む芸術教育は大学からでは遅い、高校レベルから始めなければと、かつてわたしに強い口調で語っていました。その野望?希望?はあっという間に実現し(ダニーは、なにか思いつくと、たいてい実現させてしまいます)、2006年、香港兆基創意書院(芸術高校)の創設へとこぎつけました。立派な劇場を備えた本格的な舞台芸術教育が可能な高校です。

 日本では、演劇教育はそれなりに盛んで、高校で舞台芸術コースをもっているところは、近年そこそこあるようです。ただ、ダニーの学校のように、世界のアートシーンの最先端にいるアーティストから直接指導を受けるような場合は、かなり限られるように思われます。キーワードは、キャリア(エンタメ)志向ではなく、クリエイティビティ(創造性)を育む場としての演劇教育です。そうです、戦後教育以来、無視することは推奨されても育むことなど想定されていなかった創造性です。生産性を上げるといった国家の目的とはまったく関係がない、生きのびる力や社会を変える力とかかわるかもしれない創造性です。ダニーは、だからこそ、高校から芸術教育を!と謳ってきたことは、言うまでもありません。

 公共教育ではほとんど形容矛盾になってしまうこうした教育的原理を、GAKUは、公共教育のちょっと外側で実現しているように見て取れます。そして今回、いわゆる若手ながらすでに国際的な活躍を展開している劇作家・演出家である山本卓卓が、「新しい演劇のつくり方」なる授業を展開するそうです。これは山本にとっても、チャレンジになると思います。なぜなら、参加者は必ずしも演劇を信じていないからです。というか、演劇なんか信じていないほうが、ふつうなんですから、そういう10代を相手に、どんな演劇の授業ができるのか、そここそが問われることになるでしょう。ゼロベースで出会ってこそ、前に進めるかどうかが課題となり、それこそが「新しい演劇のつくり方」ということになるのです。ちょっと怖いけど、見てみたい?そんな期待を抱いています。」

内野 儀(うちの・ただし)
1957年京都生れ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了(米文学)。博士(学術)。岡山大学講師、明治大学助教授、東京大学教授を経て、2017年4月より学習院女子大学教授。専門は表象文化論(日米現代演劇)。著書に『メロドラマの逆襲』(1996)、『メロドラマからパフォーマンスへ』(2001)、『Crucible Bodies』 (2009)。『「J演劇」の場所』(2016)。公益財団法人セゾン文化財団評議員、公益財団法人神奈川芸術文化財団理事、福岡アジア文化賞選考委員(芸術・文化賞)、ZUNI Icosahedron Artistic Advisory Committee委員(香港)。日本アメリカ文学会編集委員、「TDR」誌編集協力委員。

岡田利規さま

©宇壽山貴久子

 「自分が現に置かれているこの状況だけが存在する、それ以外は存在しない、……もしも本当にそうだとしたら、どうにかなってしまいそうです。
でも、世界には、オルタナティヴなものが存在します。それは不可欠です。
 芸術は、そしてその一形式である演劇は、本来的に、オルタナティヴを現出させることができます。そのことに長けています。
 そして、山本卓卓くんという演劇の作り手は、そのことをよくわかっている人だと思います。彼はそこに賭けて演劇をやっている人だとぼくは思います。

 声を大にして言いたいのは、世界と自分とのあいだに違和を感じるときに、支配的な価値観のほうに飲み込まれなければならないなんてことは断じてない、ということです。」

岡田利規(おかだ・としき)
1973年横浜生まれ、熊本在住。演劇作家、小説家、チェルフィッチュ主宰。活動は従来の演劇の概念を覆すとみなされ国内外で注目される。『三月の5日間』で第49回岸田國士戯曲賞受賞。小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』で第2回大江健三郎賞受賞。16年よりミュンヘン・カンマーシュピーレのレパートリー作品演出を4シーズンにわたって務め、20年『The Vacuum Cleaner』がドイツの演劇祭Theatertreffenの“注目すべき10作品”に選出。『プラータナー:憑依のポートレート』で第27回読売演劇大賞 選考委員特別賞受賞。21年戯曲集『未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀』で第72回読売文学賞 戯曲・シナリオ賞受賞。

木佐貫邦子さま

©RIBUN FUKUI

「 私はいつも学生たちに「迷ったらGO!」と言い続けて来ました。
何かを決断する時、人に迷いはつきもの。でも迷うくらいなら飛び込んでみたら、と。
しかし、悩んだり迷ったりすることにも意味があるとも思っています。
なぜなら、心が動いた、という証拠だからです。心が動けば、一歩踏み出すかも知れない。一歩踏み出せば見える景色が変わるだろうし、自分はここにいる、と感じるかも知れない。
ましてや、その踏み込んだ先が演劇の領域ならば尚更面白くなりそうではありませんか。
このプロジェクトの誘い人は山本卓卓。
 2016年の夏に私は山本卓卓の創作過程に立ち会う機会に恵まれました。(演劇系大学共同制作公演「昔々日本」劇作・演出:山本卓卓/主催:文化庁・桜美林大学/@東京芸術劇場シアターイースト/2016年9月) そこで目撃した演劇の作り方は、これまでに私がイメージしていたものとは違う世界でした。山本君は目的地を見据えながらも、その道すがら出会うささやかな事柄にも目を向けていました。道草だったり、遠回りだったりを厭わない、、、そんな風にも見て取れました。道すがら出会う事柄は、おそらく役者たち(学生たち)から発信される(醸し出される)心の内の声によるもので紡がれていたのだろうと思います。
 山本君は僅かな時間も惜しんで役者一人一人と対話を重ね、たわいのないことを役者に話してもらって、ただただそれに耳を傾ける、、、そんな時間を通して何か大切なものを育んでいるように見受けられました。結果それは、舞台上に流れる時間と日常と呼んでいる我々の普段がボーダレスであると感じる不思議な時空間を生み出しました。
 『客席と一体になる』ということを舞台関係者なら誰もが望むことだけれど、実にこれが難しいということも皆知っています。でもこの時、山本君は、コツコツと積み重ねた時間の果実を見事に舞台という目的地まで誘うことに成功したのです。

ですから、この度のこのプロジェクトに於いても、心を動かし一歩を踏み出し勇気を奮って参加した10代の人たちが、山本卓卓の誘いによって、それぞれの目的地へと伸び伸びと歩を進めることを期待しています。きっとまた、素晴らしい時空間が生み出されるに違いないのですから。

GAKUの取り組みに心から賛同いたします。」

木佐貫邦子(きさぬき・くにこ)
ダンサー/コレオグラファー/桜美林大学教授
81年現代舞踊協会新人賞、全国舞踊コンクール第一位文部大臣賞受賞後「黒鳥伝説オディール」でソロデビュー。82年〜88年の「てふてふ」シリーズは9作を数えニューヨーク、シドニーなどでも踊る。90年以降ダンスユニットneoを結成し若手と共に熱くダンスを見据える。04年より桜美林大学総合文化学科(現:芸術文化学群)で学生の育成に携わる。山本卓卓は06年度生。コロナ禍で停滞したOPAL(桜美林大学パフォーミングアーツレッスンズ)をこの11月に再始動予定。自身の舞台活動としては8年ぶりの舞台となるニブロール新作公演「センス・オブ・ワンダー」(@シアタートラム/7月)に出演した。

桂枝之進さま

「ガクジンの企画で山本卓卓さんとお話しさせて頂いた時、「やり続けることで生まれる気迫・迫力に人は惹かれる」と、演劇の新しい形に14年間挑まれ続けているご本人から聞くことができてとても勇気付けられたのを覚えています。
そういう類いの、言葉では言い表し難い凄みって、同じ空間で同じ空気を吸わないと分からなかったりする。
そこに中高生でアクセス出来るなんて贅沢だな〜と思いますし、きっとこの授業に来るべくして吸い寄せられる参加者の皆さんは生の体験を大切に持ち帰るのだと思います。
未来がより文化的に、豊かになるためのクラウドファンディング、応援しています!」

桂枝之進(かつら・えだのしん)
2001年6月20日生まれ。5歳から落語を聴き始める。2017年1月 中学在学中に六代文枝一門三代目桂枝三郎に入門。2017年12月 天満天神繁昌亭「枝三郎六百席」にて初舞台。全国の落語会やイベント、メディア等で活動するほか、2020年、落語クリエイティブチーム「Z落語」を立ち上げ、渋谷を拠点にZ世代の視点で落語を再定義・発信するプロジェクトを主宰している。

高尾隆さま

「演劇は人間の探究であり、人間関係の探究だと思います。10代のアーティストのみなさんの創造と学びのチャレンジを楽しみにしています。」

高尾隆(たかお・たかし)
東京学芸大学芸術・スポーツ科学系音楽・演劇講座演劇分野准教授。1974年島根県松江市生まれ。1998年東京大学文学部卒業。2004年一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。インプロ(即興演劇)、吹奏楽教育。インプロをキース・ジョンストン氏などに師事。学校、劇場、企業、地域などでインプロ・ワークショップをおこなう。主宰するインプログループ「即興実験学校」ではワークショップをおこなうかたわら、舞台にも立つ。著書に『インプロ教育:即興演劇は創造性を育てるか?』『インプロする組織』(共著)『学校という劇場から』(共著)『ドラマ教育入門』(共著)『クリエイティヴ・アクション』(共著)など。

小堀陽平さま

「自分が高校生の頃に出会った大事な言葉に、永瀬清子さんという詩人によるこんな言葉があります。

詩人とは何か。
詩人とは誰よりも正直な人でなければならない。
人間の精神について、自分の存在について、誰よりも正直に語るために嘘をまなぶ。

演劇はまさに【誰よりも正直に語るために嘘をまなぶ】ことを個々人が集団として探究し波及させていくアクティビティであり、山本卓卓さんはそのことを真摯に考え続けているアーティストであるように僕は思っています。そんな山本さんとの共同作業の機会は参加する中高生にとって本当にエポックな体験になるでしょうし、これからの日本社会にとっても有意義なモデルケースとなる可能性を大いに秘めていると感じます。

この企画が豊かなケーススタディとなるよう、演劇関係者や教育関係者をはじめ多くの方々にご支援いただけることを願っています。
僭越ながら、同じような関心を持つ者として、僕からもどうぞよろしくお願いいたします。」

小堀陽平(こぼり・ようへい)
演劇作家、文化事業デザイナー。東京都出身。2012年より岩手県西和賀町にて演劇等の合宿事業「ギンガク(銀河ホール学生演劇合宿事業)」を立ち上げる。2014年、西和賀町に移住。2017年、西和賀町文化創造館アートコーディネーターに着任、演出力を競う日本唯一の高校演劇大会「いわて銀河ホール高校演劇アワード」や町民劇事業「銀河ホール演劇部」を企画・実施。2019年より岩手県立千厩高等学校演劇部の部活指導員に着任、同年岩手県最優秀賞(東北大会推薦)、翌2020年東北ブロック優秀賞一席(春季全国大会推薦)。現在、上記のほか、一般社団法人ブリッジ代表理事、岩手県文化芸術コーディネーター、北上市民劇場ディレクター、八王子ユースシアターディレクターを務める。

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