越境文学サロン 第3回

『鴨川ランナー』を通して越境性を考え、持ち寄る
文学の越境性や私達自身の越境性に着目し、読書体験を深め広めていくことを目指すクラス「越境文学サロン」。 クラスの第1回から3回までをターム1とし、グレゴリー・ケズナジャットさんの著書『鴨川ランナー』を読み込んでいきます。
第3回目となる授業は、ターム1を締めくくる最終回。今回は、会場としてお借りしている目白庭園 赤鳥庵を飛び出し、ご近所に今年4月にオープンした「ブックカフェ・ノーム」にて開講しました。代々、薬屋として営んできた古民家を改装した空間には、オーナーによるこだわりの選書が並びます。

小説というかたちに落とし込む方法
前回の授業では、『鴨川ランナー』の著者グレゴリー・ケズナジャットさんを迎え、本書の背景となった経験や苦悩、そして想いを伺いました。幼少期に感じた第二言語への希望や、日本移住後に感じた「外国人」という立ち位置、そしてその眼差しを自分自身にも向けてしまっていたという二重の疎外感。さらには、文学を通してそれらを越境していった時の解放感。今回の授業では、著者ご本人の口から聞くことが叶ったこれらの背景が、どのように小説というかたちに落とし込まれているのか、その構造を学ぶことで紐解いていきました。例えばその構造とは、起承転結と呼ばれる物語の枠組みとして現れます。どこが作品の中で重要な起点となっているのか。そこからどのように物語が流れていくのか。皆で音読をしたり、意見を言い合ったりすることで、作品の理解を深めながら、書き手としての工夫を身に着けていく機会となりました。

自分自身の越境性
遂に課題図書『鴨川ランナー』を完読した皆さん。3回の授業に渡って向き合ってきた本書が、自分自身の経験や人生、思考にはどのように接続されるのか、考え話し合います。
このクラスでは、ご両親のどちらかが日本以外の出身である生徒や、海外暮らしを経験したことがある生徒、実家が遠いため寮生活をしている生徒、そして海外に憧れがあるもののまだ行ったことがない生徒など、様々な背景や思いを抱えながら参加する生徒が集っています。『鴨川ランナー』では、アメリカから来日し京都で暮らす外国人の青年が主人公として描かれていますが、生徒の皆さんの暮らしにおける疎外感や戸惑いとも多く重なるところがあったようです。
クラスの後半では、越境性というものはすべての人が持つものとし、生徒のみなさんがそれを見つめ、言葉にし、持ち寄ることで、冊子を制作していきます。今回の授業においても、まさに越境性が持ち寄られる場となりました。
執筆・撮影:松村ひなた