REPORT

「(Non)Fictional Urbanism – まちの観察と実験 –」第7回〜第8回 実験と検証


「街のあるべき姿」を一枚の絵として表す
港区・新橋エリアを舞台にして、リアルな都市空間や建築デザインを学んでいく「(Non)Fictional Urbanism – まちの観察と実験 –」。建築家の海法圭さん、津川恵理さん、建築リサーチャーの川勝真一さんからなる「Town Play Studies」と、変わりつつあるまちの「観察」と理想の都市のあり方の「実験」を通して、これからの都市や街のあり方を考えていきます。

この街のこの場所がこうなったらいいな?という妄想を膨らませながら実際の地図に書き込むことを通して、新橋の街のあるべき姿を捉えていくきっかけを掴んだ前回の授業。11月18日(土)の第7回、第8回の授業ではそれをフォトコラージュで視覚的に表すことで、自分の頭の中にある街の姿が実際の都市風景として立ち現れた時の様子を想像していきます。

 


都市像をコラージュすることで現れる想い
「それぞれが思い描いている街の風景を、それを構成する要素を盛り込んだ一枚の絵として表現してみましょう。一見ありえない景色だったとしても、その中にあるべき街の姿やそこに向かっていくためのヒントを見つけていけるはずです」と津川さん。授業の冒頭にはその例として、伊藤桂司さんをはじめとする様々なアーティストによって描き出された都市風景のコラージュ作品も紹介されました。

それらも参考にしつつ、生徒の皆さんそれぞれがフォトコラージュを作成していきます。全く別の街や時代の風景であったり、空想上のものだったり、また実際に新橋の街にある魅力的な風景や大切にしたいものだったりと、コラージュで扱う素材は多種多様。街の印象やそこに流れている空気感といった、言葉だけでは表しきれない部分も含め、それぞれが想像する「街のあるべき姿」が一枚の紙の上に表されていきます。

例えば、「繋がりを大切にする街を作りたい」という想いから、地下に演劇や音楽のホールをつくってその様子をビルのスクリーンに不定期で配信したり、屋上に樹木を植えて他の生き物も含めた生態系をつくったりと、文化や生き物と人との繋がりを生む空間を街の中で立体的に展開していくというアイデア。「新橋の街の『雑多さ』をただ汚いと片付けてしまうのではなくて、人間らしい一つの街の魅力として昇華させたい」という想いから、街の特徴的な要素を水族館の水槽の中の魚に置き換えて見せることで、一見ネガティブに見えるものの捉え方や印象を変えていくというアイデア。視覚的な表現をすることで、自分自身の感覚や想いが明確になったり、作品を囲んでみんなで感想を贈り合ったりすることで新しい発見が生まれたり。都市像をコラージュすることで、会話や考えが深まっていく様子が印象的でした。

 


「グッド」「バッド」で表しきれない価値や意味を見極めていくこと
「古めかしいけど、歴史的に重要な意味を持つ建物やその街の人から愛されているお店、洗練されてはないけど使いやすいしつらえ。一見バッドに見えるけど実はグッドなものが街にはたくさんあります。それらを良くないと決め付けて排除するのは簡単。そのものの価値を多面的な視点で捉えていくことは、豊かな街のあり方を考えていく上でとても重要なことです」と、海法さん。「何を残して何を新しくするか」という街づくりにおいて大切にすべき視点を改めて確認するようなコメントで、授業が締めくくられました。

 


次回は、フィクションとノンフィクションが交差する「新橋の街のあるべき姿」を提案する
新橋の街を形作る様々な要素を「観察」することでリアルな都市風景を捉えていきながら、フィクショナルな視点を通して未来の街のあり方を構想していったこれまでの授業。次回の最終回では、その成果を持ち寄りグループディスカッションを通して発展させていきながら、実際に新橋の街への提案として落とし込んでいきます。

 

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