REPORT

観劇プログラム 第3回『BGM』


観て話して、個々の演劇体験を深める場
演劇のクラス「新しい演劇のつくり方2022」では『三月の5日間』(チェルフィッチュ)を原作とし、生徒の皆さんが新たな物語の戯曲を書き、演出し、演じ、発表していく授業が進められています。同時に、GAKUでは、10代と演劇との出会いをもっと広げていきたいと考えています。そこで、同授業の総合ファシリテーターでもあり演劇ジャーナリストの徳永京子さんによる「観劇プログラム」を開催しました。

第3回目となる今回の観劇作品はロロによる『BGM』。「東京から守谷サービスエリア、会津若松、いわき、松島、石巻を巡る2016年の2人の旅路は2006年の3人の旅路と重なり、行ったり来たりを繰り返す」という物語。登場人物の人間関係の有り様に生徒のみなさんも感じるところが多かったよう。トークゲストにはロロ主宰で今作の脚本・演出を手がけた三浦直之さん、出演の望月綾乃さんをお招きしながら、皆さんの本作品の感想や考察を交わし合いました。




舞台上での人間関係と現実のそれ
「時はとあるアイドルグループの解散が発表された2016年」、2人の主要登場人物が「学生時代の友人の結婚式に向かうため、車で常磐自動車道を下っていく」という道中を描く本作。様々な記憶や現実が錯綜しながら「2人の祝祭ムードに満ちた道中を彩る」ことに。観劇後、多くの生徒が、2人の主要登場人物の心境や関係性の変化、現実も記憶も織り交ぜられた幻想的な演出について、感想を寄せます。

「登場人物が自分の気持ちを吐露するときのセリフがすごい良かった」「2人の登場人物の変化やその関係性の変化、それを観ている自分自身の認識も変化していって、その重なりが鑑賞体験として新鮮だった」「今まで脚本や演技といったところに注目していたけど、舞台美術というものが作品に与えている影響が多いことに気がついた」

様々な意見があがっていくなかで、自ずと友情と愛情の違いやその移りゆきといった、生徒のみなさん自身がとらえている「人間関係観」に話が及んでいきます。そのなかで、「友人と恋人といった人間関係が固定的にとらえられている作品が多いことに違和感があった。この作品はそうじゃなかった」という感想からディスカッションが盛り上がる場面も。観劇体験をきっかけに、「みんなで何の話をしたいのか?」というポイントが明らかになっていく様子が印象的でした。




聞き間違いから考察が深まる、観劇プログラム
「その聞き間違い、とても面白い」と、本作のつくり手でもある三浦さんが思わず口にした、生徒のセリフの聞き間違い。それを受け止めつつ面白がってしまう三浦さんの振る舞いは、生徒のみなさんにとっても刺激的であったようです。またそれは、徳永さんが言う「正解不正解ではなくて、自分自身の感覚を言葉にすることが大切」という本プログラムの趣旨ともつながるものでした。

脚本・演出、俳優というつくり手、観客という受け手という様々な立場が交わるこの機会。生徒のみなさんの中には、脚本家や演出家、俳優を目指している方もおり、三浦さんや望月さんと言葉と交わすことで、演劇観や将来の職業感が豊かになっていっている様子でした。


演劇と10代の出会いを増やしたい
本来は最終回の予定だった今回の「観劇プログラム」。良い演劇作品がたくさんある一方で、10代と演劇作品の出会いをもっと豊かにしていきたいという想いは募ります。引き続きより良い機会を生み出していければと考えていますので、今後の展開にもぜひご期待ください。