REPORT

「東京芸術中学」第68回 会田誠さん


美術史の体系のなかで表現をする
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。3月5日のゲスト講師はアーティストの会田誠さんです。

前回の会田さんの授業は美術史についての講義。「アルカイック/バロック」「非表現主義/表現主義」「アポロ/ディオニソス」など、会田さんの考える美術史における対立構造を捉えながら、その体系を掴んでいきました。そして、それを捉えることと自身のオリジナリティをも捉えられることがつながっていくことを学んでいきました。その上で生徒の皆さんに発表された課題は、自身が美術史のどこに位置付けられるのかを考えながらオリジナルの絵画を描きあげるというもの。今回はその課題の発表を行いました。





絵を描くと現れるその人の現在地
「絵を描くことはもともと雲をつかむような自由なもの。だからこそ、絵からは描いたその人の人格が現れるんです」。そんな会田さんのコメントから発表はスタート。その言葉通り、生徒の皆さんの作品は手法もモチーフも様々。花言葉を調べながら鉛筆で描き上げた花の素描、全く異なるタッチで一枚の紙に描かれた二つのお菓子の水彩画、日本を代表するアニメのキャラクターをコラージュした曼荼羅などが発表されていきます。

そんな発表に対して、会田さんからは「普段からこんなタッチで描いているの?」「花言葉は調べたのは今回のため?」などの作品に対しての問いが投げかけられると共に、「普段はどんなことに興味がある?得意なことは他にもある?」と、生徒の皆さん自身についても質問していきます。「普段は文章を書いています」と言う生徒の方には、「絵だけじゃなくても、それを活かした表現方法ももっとあるはず」など、「僕個人の意見ですが、、、」と前置きしながらもそれぞれの長所を見つめて一人一人の背中を一人一人の方向へと押していくような時間。美術史の体系を掴むことで、それぞれが表現者としてどんなところに位置しているのか、そんな「現在地」を会田さんと一緒に確かめていきました。


自分中に補助線を持つことの必要性
「大人になったときでも、もちろん今でも、何かを判断するときの補助線として自分だけの対立項や構造をつくりあげておくこと。このことがこれから迷ったときのガイドラインになる。そのお試しとして、今回は僕の考える美術史にあてはめて制作してもらいました。次は自分の補助線を見つけてみてください」。ここまでの授業の意味を改めて振り返りながら、授業が終了しました。



歴史を学ぶ意味を再確認
芸中では、歴史を学んでいく意味について様々な観点で菅付さんやクリエイターの方々から語られることが多々あります。美術史への造詣と自分自身のオリジナリティの在り処を同時に深めていくことの意味を、ご自身の作品や作家としての生き方を交えながらお話をしてくださったこの授業。そんな会田さんの試行錯誤を生徒の皆さんも追体験しているようでした。

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