REPORT

「東京芸術中学」第61回 色部義昭さん


デザインの仕事をデザインの現場で捉える
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。1月15日はGAKUを飛び出し、 60年以上の歴史を誇る広告・デザイン制作会社「日本デザインセンター」で特別授業を開講。グラフィックデザイナーでアートディレクターの色部義昭さんをゲスト講師に、デザインが生まれている現場からお話をいただくことで、デザイナーという仕事に迫っていきました。





何かが生まれる場所の迫力
授業冒頭は色部さんの案内のもと、日本デザインセンターの見学会です。会議やランチに使っているラウンジや、これまでに日本デザインセンターが手がけた書籍や貴重本が詰まった資料室など、普段は訪れることができないデザインが生まれる現場の空気感を味わっていきます。

続く講義では、日本デザインセンターの歴史や、グラフィックデザイナーやアートディレクターとしての色部さん個人のこれまでの仕事について解説。机に広げられた色部さんによるプロダクトを具体例に、絵の具や化粧品のパッケージ、美術館や空港のロゴやピクトグラム、ファッションブランドのムービーやポスターまで、様々なクライアントとつくった、様々な媒体の仕事が紹介されていきます。

その中でも色部さんが特に印象に残っている仕事の一つに、ご自身がロゴを手がけた「Osaka Metro」があるそう。運営元が市営から民営に切り替わるというまさに一度きりの機会の中、大阪を国際都市としてイメージづけたいというクライアントのオーダーを受けた色部さん。「走り続ける、変わり続ける。」というブランドコンセプトも表現していくために、動きのあるモーションロゴを提案し、近年駅構内や車内に導入されたデジタルサイネージをフル活用できるようにしていったそうです。



これまでの学びがあるからできる質問
そんな色部さんの講義を通し、生徒の皆さんもこれまでの講義を思い起こしながらデザイナーという仕事により興味を惹かれたよう。「そもそもなんでデザイナーになろうと思ったんですか?」、「『Osaka Metro』の仕事は、ロゴ以外にはどんなところをデザインしたんですか?」、「アイデアスケッチの時点でディティールが細かく書かれていましたが、そこに至るまでにどんなプロセスがあるんですか?」など、授業の後半には生徒のみなさんから様々な質問が飛び交います。


いつも「またとない」表現を探している
「違うクライアントに対して同じ表現は繰り返したくないからこそ、プロジェクト毎の『またとない』表現を探して視覚化させること。これが僕の仕事であり、僕の楽しみでもあります」と色部さん。講義の中で見ていった、多様な仕事の背景にある想いを語ってくださいます。

また、「またとない」表現を探すとき、学生時代に世界中を旅した経験が活きていると色部さんは言います。「ある美術館に行った時、作品と同じくらいチラシのグラフィックデザインが輝いて見えたことがあります。アーティスト志望だった僕にとって『こういう仕事もあるんだ』と自分の常識がアップデートされました。このような経験が今の僕を構成している。みなさんもこの場にいることは既に大きな一歩だと思いますし、これからも自分が見たいものはなんでも実際に目撃しにいくことが大事だと思います」生徒のみなさんに向け、最後にはこんなエールが贈られました。


大切なことを繰り返し確認する連続講義
これまで菅付さんによる「デザインの編集」の連続講義を通して、デザインが社会に果たす役割やデザインが生まれるプロセスを学んできたみなさん。今回は、デザイナーという仕事の深層に触れることができたのではないでしょうか。クリエーションそのものを楽しむこと、10代のインプットが将来の自分を支える財産になることなど、これまで芸中全体で学んできたことをクリエイターの生の声を通して裏付けされた、そんな授業となりました。

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