「東京芸術中学」第40回 森田真生さん(後半)
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる、「本物のクリエイティヴ」に出会うアートスクール『東京芸術中学』。2021年7月3日(土)は、独立研究者の森田真生さんによる2回目の授業!「人間はどう生きるのがいいんだろう?」そんな疑問を解く切り口の一つとして数学について研究されている森田さん。前回に続き、京都のご自宅とzoomを繋いでの開講です。
「『まだ意味のない世界』を遊ぶ」というテーマで行われた前回の講義。「『2-4=-2』、『2-4=0』、どっちが正しい?」「植物には意識がある?ない?」「肌と肌で触れ合うことって本当にできている?」など、森田さんから受講生に向けて、様々な分野からの質問が投げかけられました。日常の些細なものごとに問いを立て、みんなで言葉を交わしながら、それらの新たな一面に目を向けてみる。まさに「まだ意味のない世界」に一歩を踏み出し、その世界を体感する時間となりました。そんな前回に発表された課題は「自分にとってまだ意味のないものを見つけ、実際にそれを使って遊んでみる」こと!今度は受講生の皆さんが普段の生活では見過ごしてしまうような何かに目を向け、触れながら、観察しながら、実際に遊んでいきました。
そして迎えた発表当日。通学路の道端で拾った木の枝、家にあったコルク、着古した服、もう誰も住んでいない蜂の巣など、受講生の皆さんが持ち寄った「意味のないもの」は様々。森田さん、芸中ディレクターの菅付さんもグッと惹きつけられます。
そんな「意味のないもの」を使った受講生の皆さんの遊び方も様々です。木の枝は先端を削って箸として使ってみたり、コルクはメガネ立てやペン置きに、服はオリジナルキャラクターの人形に変身、蜂の巣にはカラフルなビーズを詰めてみたり。中には「本当に何かわからないんです」という銀色の物体(?)で遊びながら、リリアンという組糸をつくる方法を編み出した受講生も!かつてあった意味が失われたもの、そもそもどんな意味があるのかわからないものと出会い、その特性を捉えながら遊んでいきます。
「今回こんな課題を出したのは、幸福に生きることを考えるためなんです。日本語の『遊び』という言葉には、英語の『play』とは別に『隙間』のような意味があります。そして、私たちが幸福を感じられるのは、その『隙間』があるから。全てが自分に最適化された人生はスムーズに見えるけど、どこかに不具合があると一気に全部が壊れてしまう。そうではなくて、一見自分のためにはならない、意味のないものに目を向けて遊ぶ、そんな『隙間』のような時間が所々にあると壊れにくい、そして幸福に生きられるシステムをつくることができるはずです。」(事務局の意訳です♩)発表が終わり、最後に森田さんからはこんなコメントが。
さらに菅付さんからの「クリエイティヴな人生を送るには?」という質問に対して森田さんはこう言います。「自分にとって何が面白いのかわからないくらい当たり前なこと。それが他の人々を惹きつける可能性を持っている。まずそれを大切にしていくことで、表現の核ができるんだと思います。実はみなさんのすごく近いところに求めているものがあるかもしれません。」そんなエールをいただいて、今回の授業は終了しました!