「東京芸術中学」第37回 森田真生さん(前半)
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる、「本物のクリエイティヴ」に出会うアートスクール『東京芸術中学』。2021年6月12日(土)の授業は、独立研究者の森田真生さんによる1回目の授業。京都のご自宅とzoomを繋いでの開講です!
ご自身が中学生の頃から向き合っている「人間はどう生きるのがいいんだろう?」という疑問を解く切り口の一つとして数学について研究されていると言う森田さん。これまでに『数学する身体』(2015年, 新潮社)、『数学の贈り物』(2019年, ミシマ社)などの書籍を執筆、さらに「数学の演奏会」などのライブ活動も行っています。
「『まだ意味のない世界』を遊ぶ」と題された今回の講義。まずは数学を通して「まだ意味のない世界」に一歩踏み出した経験を、「整数」しか知らなかった小学生時代半ば、初めて「分数」の計算に取り組んだ体験を実例に挙げながら、受講生の皆さんとわかちあっていきます。そこから数学の歴史そのものを遡り、「2-4=0」が「2-4=-2」に変化した時代をはじめ、これまでどんな人物が、どんな思いで、数学を「まだ意味のない」方向に発展させてきたのかを探っていきました。
そんな研究者たちは、どこか子供に似ていると森田さんは言います。「座るもの」と大人が思っている椅子の上に立ったり、下に潜ったり、時には舐めてみたり。既にある意味にとらわれず、遊びながら対象に触れる姿は、異端とも呼ばれた研究者たちと重なるそう。そして、「まだ誰も経験したことのない新しい時代の始まりを迎えている」と森田さんが言う現代において、そんな「遊び心」で今までにない意味をつくりだす姿勢がとても大切になってくるとも言います。
「植物には意識があるでしょうか?ないでしょうか?」「人が食事をする理由はエネルギーを補給するためだけですか?」「私たちは本当に肌と肌で触れ合うことができていますか?」森田さんからは受講生や芸中ディレクターの菅付さんに向けてこんな質問も。日常の些細なものごとについて改めて問いを立て、それらのまだ知らない一面に目を向け、みんなで言葉を交わし、視野を広げてみる、そんな講義の時間となりました。
最後に森田さんからは課題が発表されます。その内容は講義タイトルの通り「自分にとってまだ意味のないものを見つけ、実際にそれを使って遊んでみる」こと!受講生の皆さんがどんなものを見つけ、どのように遊び、どんな意味を見出すのか、次回の発表が楽しみです!