REPORT

ナラティブとしてのファッション 第2回


語り託されるものとしてのファッション
哲学者の鞍田崇が提唱する「いとおしさ/intimacy」をテーマに9月より開講した「intimacy lessons」。その一つとして、このクラスではファッションを「物語を着ている」という視点により探求していきます。一人ひとりが持つ、一着への記憶や想いにまつわる「物語」。一着が出来上がり手にされるまでの、誰かの「物語」。生徒一人ひとりが一着にひもづく物語をリサーチすることから、これからのファッション表現を探っていきます。






いとおしさを感じる一着を持ち寄る
哲学者の鞍田さんと事務局長の熊井さんとの対談を通して、このクラスのテーマとなる「いとおしさ/intimacy」を紐解いていった前回の授業。「いとおしいに『労(いたわ)り』の意味があるのは初めて知ったけど、腑に落ちる感じもした」「『お守り』というという言葉が印象に残っている」「でも、自分にとっての『いとおしさ』はまだなんだかわからない」と、それぞれの印象を振り返りながら2回目となる授業が始まります。

これからの創作の起点となる、「いとおしさを感じる一着」を持ち寄った今回。机に広げ、触ったり、着てみたりしながら、自分自身のその一着への記憶や想いが語られていきます。学校では「なにそれ」と指をさされたけど、今でもお気に入り。母親が買ってくれて、何気なく着ていたけど、今は毎年冬に着ないと落ち着かない。過去にこの服を着ていた人の存在を感じられて安心する。自分には似合わないけど、いつか似合う誰かに着てほしい。なぜかわからないけど、ずっと飾ったまま。なかには「これまで言葉で表すことのなかった事柄や感覚を言葉にした」という生徒の方も。生徒や講師からの問いかけも通じて、自分自身と一着の物語を紐解くことで、それぞれの「いとおしさ」の輪郭やファッションへの想いを感じられる時間になりました。



ファッションとサステナビリティ
今回のゲスト講師には、編集者の向千鶴さんをお迎え。ファッションメディア「WWD」の編集統括を経て、現在は同メディアの「サステナビリティ・ディレクター」を務めています。当日は、向さんも「いとおしさを感じる一着」を纏って登壇。生徒の皆さんとの会話も弾みます。ご自身の物語とともに生徒の皆さんの物語をさらに深掘りする問いを投げかけつつ、「サステナビリティ(持続可能性)」と向き合うことになった経緯が紹介されます。その中では、ファッション業界が抱える社会に対して抱える課題、そして、それを体感したご自身の意識の変化も語られます。

そこで向さんから紹介されたのが、「循環」をテーマに掲げた誌面の1ページ。Tシャツ1枚を例に、生産、販売、再利用、リサイクルの4分野にわたり、それが廃棄されず循環するための理想的な流れがビジュアルで掲載されています。たった1枚のTシャツを捨てないために、数え切れないほどの工程や人々が関わることが示されるそのビジュアルから、改めてファッション産業の複雑さを目の当たりにしていきます。同時に、今日それぞれが持ち寄った服は、どのような流れの中で今自分の手元にあるのか。そのような問いも生まれてきます。

次回の課題は、今日それぞれが持ち寄った一着が出来上がり手にされるまでの、誰かの「物語」を調べてくること。自分の「物語」だけではないものを捉えた時に、自分の中でのいとおしいという感覚はどのように変化するのかを探っていきます。

執筆/撮影:杉田聖司

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