GAKU合同展示会 「YES」
「食」「ファッション」「建築」という領域において、10代がクリエイターや専門家と共にサステナブル社会を構想していった3つのクラス。その成果発表の機会として、有楽町を舞台に、2025年3月21日(金)から3日間、合同展示会を開催しました。
ここでは、3日間を通した合同展の様子とともに、4つのトークイベントと2つのワークショップをご紹介します。
GAKU合同展示会「YES」について
クリエーションの学び舎 「GAKU」 では、三菱地所株式会社との協働のもと、10代がクリエイターや専門家とともに食、ファッション、 建築の分野においてこれからのサスティナブル社会を構想することを趣旨としたクラスを、2024年10月からおよそ半年間にわたり開講してきました。その成果発表の場として、有楽町を舞台に「有楽町アースサミット(YES)」を開催しました。
地球の環境課題と向き合いながら、クリエーションに臨むこと。それは、「つくりたいけど、つくりたくない」というジレンマを抱え込むことになります。しかしながら、そのジレンマを「YES」と肯定し、それをあるべき社会に向けて状況を前進させていくエネルギーに転じさせていくこと、それこそが今、求められているようにも思います。
ジレンマを力に変える。そのためには、いじけず、くじけず、そのジレンマを味わい尽くすことが必要な気もします。 そして、それが、カテゴリーを超えていく動機にもなっていきます。その機会を十代が、わたし達に贈ってくれています。
展示会の開催概要はこちら
「限界美食論」(食)の作品一覧はこちら
「わたしたちのファッション表現」(ファッション)の作品一覧はこちら
「未来都市における循環のシンボル」(建築)の作品一覧はこちら
設営
半年間の成果を、有楽町で届ける
朝から設営がスタート。生徒の皆さんも続々と作品を会場のYAUに運び入れてきます。中には、当日ギリギリまで作品制作を続けていた様子の人や、設営中にさらに手を加える人も。クラスの中だけではない、開かれた場で成果を発表するこの機会。一人ひとりの熱意が感じられます。ハシゴで作品を吊ったり、ZINEを綴じたり、土を床に敷いたり。設営では、それぞれの作品に合わせた展示方法を、GAKUスタッフや生徒同士で探り、形にしていきました。
トークイベント
有楽町で、サーキュラーは可能か?
安居昭博(「サーキュラーエコノミー実践 ーオランダに探るビジネスモデル(学芸出版社)」著者)、田中達也(株式会社スペック)、村野修二(三菱地所株式会社)、佐藤海(GAKU事務局)
有楽町の街を舞台に開講された建築のクラス「未来都市における循環のシンボル」での実践を踏まえつつ、持続可能な都市や社会のあり方について議論を深めていった本企画。
トークテーマになったのは、生徒の皆さんの建築アイデアの起点となった都市に対する「違和感」。例えば、「この街には学生や若者がお腹いっぱい食べれる場所がない」「目的がないと居てはいけないような感じがする」「街の風景がどんどん変化していて、自分が置いてけぼりになっている様な感じがする」など。登壇者陣は、10代それぞれの率直な想いを受け止めつつ、また、それぞれの活動におけるジレンマも分かち合いながら、これからの都市に向けた会話を育んでいきました。
公開雑談:正直どう思う?サステナビリティ(持続可能性)
生徒有志、GAKU事務局
3クラスの生徒が集い、それぞれのテーマや創作に向かう中での気づきやジレンマを交わし合いながら、一連の活動や作品を振り返る公開雑談。これまで別々の会場とスケジュールで受講していた3クラスの皆さんは、昨年10月ぶりの再会の機会でもあり、初めて他クラスの作品を見る機会でもありました。
10代同士でこれまでの取り組みを紹介しながら、サステナビリティと向き合うことで感じたジレンマを書き出していった当日。「買うより作る方がお金がかかる」「気持ちを込めて作った作品、捨てるところまで考えたくない」「このジレンマは独りでは解決することができない気がする」。そのメモを並べてみると、新たな発見や思わぬ共通項が見出されていきました。
「ファッションと地球のより良い関係」の土台を考える
向千鶴(「WWD」サステナビリティ・ディレクター)、宮浦晋哉(ファッションキュレーター/糸編代表)、長尾麻友子(社内アクティビスト/デザイナー)、「わたしたちのファッション表現」有志
ファッションと地球のより良い関係を育む、これからのファッションクリエーションのあり方について、つくり手の視点、うけ手の視点、そして10代の視点からのクロストークを開催しました。
ファッション業界のジレンマと向き合いアクションを起こしている10代とゲストによる今回のトークでは、それぞれのジレンマと共に、その先に見えてきた「良い兆し」も紹介。例えば、環境問題を意識し始めた当初は、伝え方に難しさを感じていたという10代の方。家族や友人から着ない服を集めてリメイクする活動を通して「言葉ではなく行動で伝える」ことの可能性を見出せたそう。ゲストの方々も、共感や応援が寄せられます。そのような明るい兆しを持ち寄ることから、これからのファッション表現やファッション業界の土台のあり方を探っていきました。
クロージングトーク:これからの、地球とクリエーションと教育
山縣良和(writtenafterwardsデザイナー/ coconogacco代表/GAKUディレクター)、野田達也(シェフ・nôlディレクター)、クマタイチ(建築家/TAILAND主宰)、GAKU事務局
食、ファッション、建築の3つのクラスの講師、生徒の皆さん、GAKU事務局でこれまでの一連の実践を振り返っていったクロージングトーク。展示会場を巡りながら、一つひとつの作品に改めて目を向けていきました。
「つくりたいけど、つくりたくない」というジレンマと向き合うことで、食、ファッション、建築における表現を拡張し、カテゴリーの垣根を越えていった作品の数々。第一線で活動する講師の皆さんにとっても、それらの10代の発想は自由に感じられたと言います。そのインスピレーションを受け止めながら、講師の皆さんが見出したテーマは、「越境」。これからのクリエーションや教育においては、分野や垣根を超える「越境」を特別なものとせずに、あたりまえに行っていくことの必要性が語られていきました。
ワークショップ
新しい思い出を編み込む
生徒有志、GAKU事務局
「わたしたちのファッション表現」の生徒の皆さんが企画したこのワークショップ。授業を通して発見した「思い出と紐づいた服は長く着用する」ことを起点に、ファッションデザインとも紐付けたワークショップ。もう着ないけど捨てられない、思い出の服を持ち寄り、それぞれが自由にリメイクしていきました。
当日は数名から始まったリメイクも、「自分もできそう!」と他クラスの生徒の皆さんをはじめ段々と人が集まりだし、最終的にはおよそ30名の方が一緒にリメイクに挑戦。お互いの持ち寄ったアイテムの思い出を聞いたり、デザインにアドバイスを贈ったり、縫い方を教え合ったり、モデルをしてもらったり。その場だからこそのコミュニケーションが交わされる現場は、まさに新しい思い出が生まれているようにも感じられました。
限界美食ピクニック
野田達也(シェフ・nôlディレクター)、「限界美食論」受講生
肉パフェ。星のムース。香りが主役のスープなど。クラスを通して生徒たちが開発した「これからの時代を拓く一皿」をフィンガーフードサイズで提供。ピクニックのように車座になりながら、参加者の皆さん、ほかクラスの生徒と共に試食を行いました。
当日は生徒と伴走してメニューを開発したシェフの皆さんが調理や盛り付けを担当。生徒の皆さんはメニューの開発の裏側をプレゼンテーションしていきます。「大好きなお肉をこれからもどうやって食べ続けられるだろうか」「四季がなくなりつつある日本で食から四季を感じることはできないだろうか」。ただ試食するだけではなく、その一皿に込められた想いや問いかけに触れることで、試食後の会話も豊かなものになっていきました。
(執筆・杉田聖司、佐藤海)