REPORT

「遊びのアーバニズム実践学2022」第2回 まちZINE

ZINE制作を通して都市を体感する
街を舞台に、「遊び」を通してリアルな都市空間や建築デザインを学んでいく「遊びのアーバニズム実践学」。建築家の海法圭さん、津川恵理さん、建築リサーチャーの川勝真一さんからなるプロジェクトチーム「Town Play Studies」と、東京理科大学理工学部建築学科西田研究室の学生の皆さんとともに、全10回の授業を通して「遊び」からこれからの都市や街のあり方を考えていきます。

12月20日(土)に開講された第2回「まちZINE」では、個人の視点から都市を捉えていくことの可能性を紐解きながら、その実践として、生徒の皆さんそれぞれの都市体験を手づくりの冊子「ZINE」として表現していきました。

 

都市を豊かにみる方法
「街の中には、機能や効率で測ることのできない価値や楽しみ方がある。それらを見つけていく鍵は、『主観的にみる』ということだと思っています。『つくる側』ではなく、『つかう側』から都市のあり方を考えること、それは建築や街づくりにおいても大切な視点です」と川勝さん。

都市を豊かに捉えていくための参考として、「考現学」とそこから派生していった「路上観察学会」による「トマソン」が紹介されました。「考現学」とは、例えば、街頭を歩いている人の服装や髪型を記録・分類することで時代の移り変わりを考察するなど、人類の遺物から過去のあり方を解き明かしていく考古学の知見を、現在の人の暮らしに当てはめ、現代社会をとらえていくもの。普段は通り過ぎてしまうものにも着目し、意味や価値を見出していくことの面白さを感じていきます。さらに「トマソン」では、どこにも通じていない扉や登れない階段など、本来の機能を無くしてしまった建築が「芸術作品」として扱われていることを確認し、まさに遊び心を持ちながら個人の視点を豊かにしていくことによって、都市の体験が変容していくことを体感しました。

 

それぞれの都市体験を分かち合うと楽しい
「考現学」や「トマソン」を参考にしながらも、自分なりの都市を観察する視点を磨いていくために、渋谷の街を舞台にした「まちZINE」の制作にとりかかります。同じ街でも、何に着目すべきか?それをどのように写真に収めるべきか?自分の視点をどうやって伝わりやすいものにしていくか?フィールドワークと制作は短時間ではありますが、生徒の皆さんそれぞれに様々な試行錯誤が生まれました。完成したZINEはみんなでお披露目。作品を紹介しつつ、それぞれの渋谷の街への着眼点を分かち合います。

「自分にとって渋谷は『迷う街』。今回のZINEではどうして迷ってしまうのか、街を歩きながら自分なりに考察してみました」「地面にあるよくわからない標識やサインが気になったので、とにかく集めてみました。重要なサインなのかもしれないけど、自分にはよくわからなくて、なんだか不思議なものに見えた」「街の建物をじっくり観察してみました。渋谷は『新しい街』という印象があったからそう見えていたけど、よく観察してみたらレトロな雰囲気の建物がたくさんあって意外だった」と生徒の皆さん。

「同じ街にいても、人によって全然違うものが見えている。そういう多面的な面白さが街にはある。だからこそこれからの建築や都市計画は、個々の視点や感覚をどのように他の人と分かち合い、一緒に過ごしていくかを考えていくことが大切なのではないかと思います」と言う津川さんの言葉は、「つかう」の視点を考えながら「つくる」という川勝さんのイントロダクションを裏付けするものでした。そして、なにもそれぞれの視点をZINEを通して発表した際に、みんなが楽しそうに盛り上がっていたのが印象的でした。

 

次回は、都市の「目には見えない要素」を可視化する
次回のテーマは「センシング」。温度や湿度、硬度、風速など、普段の生活の中で感覚的に捉えている「目には見えない要素」を数値として表すことから、都市のあり方を捉えていきます。

 

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