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「未来都市における循環のシンボル」作品一覧

「食」「ファッション」「建築」という領域において、10代がクリエイターや専門家と共にサステナブル社会を構想していった3つのクラス。その成果発表の機会として、有楽町を舞台に、2025年3月21日(金)から3日間、合同展示会を開催しました。

ここでは、建築のクラス「未来都市における循環のシンボル」生徒の皆さんの作品をご紹介します。

「未来都市における循環のシンボル」について
人の暮らしが、都市が、未来が、どうあるべきか。建築を構想するということは、そのようなことを考えるということです。サーキュラーエコノミー(循環経済)という考え方は、そのときに多くの示唆を与えてくれます。このクラスでは、持続可能な社会の実現について学びを深めていきながら、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリアを舞台に建築的なシンボルのあり方を構想していきました。そのプロセスの中では、実現可能性を担保していくために、様々なデータの収集や解析にも力を入れていきました。

形だけをつくりたいわけじゃない、課題解決のためだけでもない。そのようなジレンマを抱えながら、およそ半年間の活動に取り組んできました。本展示では、その成果として、大丸有エリアを舞台に考案された「シンボル」のアイデアとともに、制作過程でのスケッチやメモを展示します。今はまだないし、実現できるかどうか分からないけど、自分たちが暮らす場所がこうあって欲しいと願うこと。そういった個々の眼差しにこそ、これからの都市や社会のあり方を拓く可能性が宿っているように思います。本展示がその一助になれば、望外の喜びです。

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「有楽町フォレストパーク」
高木健汰郎、ショー茉里亜リナ、高市和実
開発により、目まぐるしく変化する東京の都市空間。それらは、元々その土地に宿る記憶や歴史をも塗り替えてしまうだろうか。その急速なサイクルに、人が取り残されてしまってはいないだろうか。有楽町の街の一つのシンボルとして、人々に愛されてきた有楽町ビルディング。「有楽町フォレストパーク」は、2024年に閉館し、建て替えが予定されているこのビルの解体プロセスの一部を街に開くことで、建物の終わりと始まりをみんなで見届けたいという提案である。それは、「解体をしている最中にも、建物が街に、そして街で生活する人々に対しても責任を果たす方法」であるともされている。

「MIYUKI GREEN TOWER」
平野とわ子、秀島知永子、仲條百合香
人が、自分の居場所だと感じられる都市とはどのようなものか。それは建築や空間を構想する上でとても重要な問いかけであり、またそうあるべきであると思う。「MIYUKI GREEN TOWER」では、そこには「誰しもにとって安心安全な食環境」が必要であるとし、大丸有エリアに農園やコンポストが隣接した「地産地消のフードコート」が提案されている。農園で植えられるのは、「見てもきれいだし食べてもおいしい」植物。農園の肥料となるコンポストは「透明な食の循環拠点」として、そのプロセスが都市の中で常に共有される。食材が作られ、人の口に運ばれて、ゴミがまた食材の肥料になって、といった循環が、一つの都市風景を作り出していく。

「ASHIYOU~YOUもこのまちのいちぶ~」
朝比奈和泉、関川あかり、大沢ここ
このエリアにおいて、「循環」を通して実現されるべき営みや体験とはどのようなものか。そこで「仕事とプライベートの二面性」に着目しているところが、この案の特徴的な部分であり、またエリアの性格を色濃く表すところでもある。オフィスから排出されるデータの「熱」、つまり労働によって生まれる資源を、まちなかで人が交流できる空間としての「足湯」に循環させていく。そこには、この街のオフィスワーカーたちの日々の働きを報いるような眼差しも感じられる。そこに生きる人それぞれが、「このまちのいちぶ」だと思えること。そのような予感や実感が都市の中で広がることそのものも、循環を後押しするエネルギーになっていくかもしれない。

「丸の家(まるのうち)」
宮沢心、榎本優花、大友 恵梨子
人が愛着を持てる都市。そこで何かしたいと思える都市。都市で循環を生んでいくための下地として、このような街と人との有機的な結びつきが必要であるとされる。その上で、「丸の家(まるのうち)」では「人が会話をし続けられる拠点」として、サステナブルな暮らしのあり方を実践するための住居が提案されている。対象とされる丸の内エリアは2024年現在、常住人口が8人であるのに対し、土日の訪問者数は10万人を超えるという。大勢の人が訪れては過ぎ去っていくこの街で、人が土地に根ざすということ、その息遣いが感じられるということのシンボル性。それは、「急速な変化ではなかったとしても、ゆっくり着実に、都市の循環を後押ししていく」ことが期待されている。

「丸の内の隙間にこんな循環の拠点がある!」
林笑茉、松村凜、村上心
都市の中で、道が通りすぎるだけの場所ではなく、何かが起こる予感のある場所として感じられたとしたら。都市の中で、人が単なる通行人ではなく、様々な背景を持った一人の人間として感じられたとしたら。循環を実現するためには、「人のつながりと知識の共有が必要不可欠」であるという。そのためにこの提案では、サステナブル社会に向けた議論や学びを育むイベントが、都市の隙間に食卓空間を立ち上げることで展開される。その時、イベントという営みは、エリアの風物詩としてシンボル化されていく。

展示会の全体レポートはこちら
「限界美食論」(食)の作品一覧はこちら
「わたしたちのファッション表現」(ファッション)の作品一覧はこちら

(執筆:佐藤海)