「わたしたちのファッション表現」第2回 ファッションデザインの基礎を体験する
身近なものから、ファッションデザインのそもそもに触れる
ファッションデザイナーでGAKUのディレクターも務める山縣良和がメイン講師を務めるこのクラスでは、ファッションと地球のより良い関係を育むクリエーションに挑戦。地球と、それぞれの「わたし」とその表現が大切にされることで浮かび上がる「わたしたちのファッション表現」とはどのようなものか。それをこのクラスでは探求していきます。国内だけでも毎年10億着もの服が廃棄され続けている今、それでも装うことの喜びを味わい続けていくことは可能なのでしょうか。
11月9日(土)の第2回授業は、服の設計図とも言える型紙「パターン」づくりに挑戦。身近なあるものを使って、これから生徒の皆さんが取り組むファッション表現の一つとして、手を動かしながらファッションデザインの基礎を体験していきます。
分解と再構成でパターンをつくる
今回の講師は、coconogacco卒業生で、現在はスタッフとしてカリキュラム構成や受講生の制作の技術的なバックアップを行い、またwrittenafterwardsのクリエイティブチームとしてもショーピースやインスタレーション制作も行う大草桃子さん。元々は服飾専門学校で教科書通りのパターンを学ばれましたが、自分の想像以上の服が生まれないことに気づき、coconogaccoで制作に向き合う中でご自身のパターンのつくり方にも大きな変化があったそう。授業では、まず大草さんからパターンの引き方が紹介されます。
ラップを巻いたトルソーにペンで線を書いていく大草さん。その線に沿って鋏を入れていくと、身体のシルエットに沿って立体をつくっていたラップはバラバラのパーツに。平面になったそれらのパーツは型紙となり、その形に沿って生地を裁断し繋ぎ合わせることで、トルソーと同じ形の服が出来上がることになります。
さらにラップを巻く立体はトルソーに限らずなんでもいいと言う大草さん。例えば、生徒の皆さんが座る椅子など、身の回りの様々なものが服になる可能性に生徒の皆さんも触れていきます。例えば、ちょうどギターを持ってきていた生徒の方からは「これで服が作れるってことですか?」という声も。
想定外を生んで、想像を超える
生徒のみなさんがパターンづくりに挑戦する前に大草さんからは「この方法はトルソーを包むのにラップを沢山使ってしまうのでサステナブルとは言えないかもしれません」と、正直な想いも語られます。そこで、「自分の想像を超える方法」「ラップを使わないで済む方法」を叶えるために生徒のみなさんに意外なものが配られます。それは、バナナやみかんなどの果物。皮で包まれているのでラップが不要でもあります。
線対称だったりジグザグだったり。果物の上に描いた線に沿って皮を剥いて、その皮をコピー用紙の上で縁取り、パーツに分けたコピー用紙でもう一度果物の形をつくってみます。ですが、果物の上に書いた線が複雑であればあるほど、元の形には戻らないよう。そのズレがあるこそ、この方法が新しいファッションデザインを生み出す可能性を持っていると、大草さんは言います。
「想像しないものができた、、、!」「でもこっちの方が面白いかも」。そこから生徒の皆さんも勢いづき、筆箱やギターなど、自分たちの持ち物でパターンを取りながら、それぞれの想像力にブレーキをかけないで済む態度を養っていきます。
*授業で用意した果物のうち、皮を剥いたものは授業後に生徒の皆さんとスタッフで美味しくいただき、残ったものはそれぞれお持ち帰りしました。
ファッションデザイン、だけではないファッション表現を探る
立体を捉ていくというファッションデザインの基礎を体験してきた今回の授業。とはいえ、講師の大草さんからは、「服を作ることだけがファッション表現ではないとも思っています。これまでの授業を踏まえながら、自分と地球にとって良い表現方法をそれぞれがこれからも探っていって欲しいと思います」と言うコメントも贈られます。そこで次回までの課題はマインドマップをつくること。ファッションに限らず、自分自身の興味関心を紐解きながら、それぞれの表現方法を探っていきます。
執筆/写真:杉田聖司