REPORT

「わたしたちのファッション表現」第1回 ファッションと地球のより良い関係を構想する①


ファッションと地球のより良い関係を考える
ファッションデザイナーでGAKUのディレクターも務める山縣良和さんがメイン講師を務めるこのクラスでは、ファッションと地球のより良い関係から生まれるクリエーションに挑戦。地球と、それぞれの「わたし」とその表現が大切にされることで浮かび上がる「わたしたちのファッション表現」とはどのようなものか。それをこのクラスでは探求していきます。国内だけでも毎年10億着もの服が廃棄され続けている今、それでも装うことの喜びを味わい続けていくことは可能なのでしょうか。

10月30日(土)の初回授業は、メイン講師の山縣さんのイントロダクション。今地球がどのような状況なのか。その現状を受け止めつつ、一人ひとりが「ファッション」に惹かれるその想いに耳を傾けていきます。




山縣さんの想いと取り組みに触れる
「未来のあるべき姿」を想像していくためには、まず「今がどのようなものか」を捉えていくことが必要です。この授業では、同じくサステナビリティを一つの主題に扱うクラス「限界美食論」「未来都市における循環のシンボル」との合同授業としてガイダンスを予め開講。GAKU事務局と受講生、それぞれがリサーチを行い、現在の地球環境のあり方を見つめていきながら、創作に向かう準備をしていきました。

今回の授業では、まず山縣さんの自己紹介からスタート。生い立ちからファッションに興味を持ったきっかけ、そしてイギリスへの留学経験やファッションブランド「writtenafterwards」ファッションスクール「coconogacco」立ち上げの経緯まで。ご自身の半生において、ファッションがいかに大きな存在であるかが語られます。だからこそ、ファッション業界が抱える様々な問題にも特別な想いがあるという山縣さん。改めてそれらの問題を振り返りながら、ファッションと地球のより良い関係を探っていった過去のコレクションが紹介されます。例えば「祈り」をテーマにしたコレクションでは、合掌造りの一軒家で行われていた養蚕業や和紙づくりの循環的な仕組みからインスピレーションを受けて、和紙を使った土の中で分解される生地で服をデザインしたと言います。




「お気に入りの服」から考える
山縣さんの言葉に応じるように、生徒の皆さんからも、このクラスを志望した想いが語られます。ファッションデザイナーを目指して専門学校に通う方、以前はコンプレックスだった身長を活かして始めたモデル活動を通じてデザインにも興味を持った方、障害の有無にもかかわらず誰でも着たいと思える服を作りたいという想いからファッションブランドを立ち上げた方、幼少期の父親とのペアルックの影響で中性的なスタイルに興味を持っている方、自分にはファッションセンスがないと思っている方、などなど。

また生徒の皆さんはそれぞれの「一番昔から着ているお気に入りの服」を持ち寄ったアイテムも披露。自分でイラストを書いた一着、両親に買ってもらった一着、憧れのアーティストにサインをもらった一着など。中には10年以上愛用している一着も。それぞれが持っている個人的な記憶や想いに紐づいた一着が大切にされるということは、人の気持ちや存在を大切にすること。そして、それが地球を大切にすることとつながっていくのかもしれません。


腹の底から話すこと
授業の終盤には、山縣さんからはご自身も強く影響を受けたという日本のブランドのファッションショーを紹介しながら「ファッションってなんだろう?」「普段着れない服ってなんのためにつくるんだろう?」という問いかけが投げかけられます。グループディスカッションでは、そのテーマから派生して、「そもそも服を着るのがめんどくさい時がある。裸はファッションじゃないのかな?」「なんでおばあさんはみんな似たような服を買うようになるんだろう?」など、それぞれの普段は語ることのない、何気ない疑問も持ち寄られ、会話を育んでいくような時間が流れていきました。

「ファッション」のそもそもに語り合うことで向き合っていった今回の授業。次回の授業では、一見してハードルの高い「ファッションデザイン」のそもそもに、手を動かしながら向き合っていきます。

執筆/写真:杉田聖司

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