REPORT

「自分だけの『見方』をつくる」第10回 展示 


成果を届けて振り返る
写真家の濱田祐史さんがメイン講師を務める、写真のクラス「自分だけの『見方』をつくる」。このクラスでは、濱田さんと10代の生徒の皆さんが、様々な実践や実験を通して写真表現に挑戦し、「写真」という存在を改めて捉え直していきます。そのプロセスを繰り返しながら、一人ひとりが社会に向ける「見方」のあり方を探っていきます。

10月26日(土)の第10回授業は、生徒の皆さんの成果展を兼ねた写真展「between A and B」に、メイン講師を務め、出展作家としても参加している濱田さんと共に足を運びます。これまで制作してきた写真作品とzineが、自分から離れて展示されているときに、どう見えるのか。それを新たに感じること、改めて気づくことを少しずつ言葉にして、授業全体を振り返っていきました。








成果展で、「見方」を社会に開いていく
生徒の皆さんの成果展の会場は、重要文化財にも指定されている三井本館。「東洋一の大金庫」とも言われる地下金庫の前に、12名の生徒の皆さんの作品群が並べられます。4ヶ月間撮影してきた写真群の中から、自分で写真を選び、レイアウトを組む。その過程の中で「自分だけの『見方』」への気づきを、一人ひとりの言葉で語っていきました。

生徒の皆さんの話に、会場に足を運んでくださっていた来場者の方も含めてみんなで耳を傾けていきます。第6回授業のゲスト講師の川内倫子さんも、この授業の前に会場にお越し下さり、「想像以上の作品。みんな頑張ったね!」との言葉を残していってくれたように、生徒の皆さんは確かな手応えを感じている様子。濱田さんとGAKUが共に開講当初から掲げていた「10代の新しい感性を解き放つことができる場」が実現された瞬間でもあったように感じました。







特別展とzine合同展販売示会で、「見方」に背中を押される
同写真展は、生徒の皆さんの成果展に加えて、濱田さんのキュレーションによる特別展、そして書店「flotsam books」によるzineの合同展示販売会も開催。

特別展では、濱田さんがガイドとなって、国内外で活動する4組の作家による作品とその背景にあるそれぞれの「見方」に触れていきます。写真に紐づきながら様々なジャンルを越境する4組の視覚表現に生徒の皆さんもグッと惹きつけられます。また「flotsam zines tour」では、150組以上の作家の熱量が詰まったzineをじっくり見ていきます。1枚のポスターから複数ページが束ねられているもの、そして巻物のようなもの。定型サイズから変形サイズのもの。多様なzineを通して、写真という表現の奥深さや可能性を垣間見て、自分なりのアイディアを膨らませているようでした。

授業自体は終了目前ですが、生徒の皆さんの表現意欲をさらに刺激し、これからも様々な表現に向かう12名の背中を力強く押し出してくれるような時間になりました。





これから「見方」をどう活かすのか
授業の最後はいつもの授業会場に戻って、クラス全体を振り返っていきます。「人と自分の境界線に溶け込む、カメラという存在にさらに興味が湧いた」「自分の中にあるものを外に出すこと。写真を通して、やっと自分の中にあるものを知ることができた」「みんなからたくさん影響を受けた。これまでは自分で勝手にルールを作って自分を縛っていた。もっと自由に表現していいって気づけてよかった」「作品を沢山つくることが自分の中の変化を成長として受け入れることができた」「風景を撮ってみたけど、本当は人が撮るのが好きなのかもしれない。今度は自分でも挑戦してみたい」。身近であるからこそ、何気なく見過ごしがちだった、写真という表現を通じて感じた様々な想いが、生徒の皆さんから寄せられました。

その想いに応えるように濱田さんからは「写真の歴史はまだ始まったばかり。僕はこの表現をさらに学び、さらに探究していきます。皆さんからたくさんの刺激をもらうことができました。皆さんのこれからも本当に楽しみです」とコメントが贈られます。

ひとり一台のカメラを手に、写真とそこに写るものに向き合ってきた生徒の皆さん。これからはそれぞれの「見方」を手に、写真に限らない様々な表現に挑戦していくはず。12名の皆さんのこれからにも期待が膨らみます。

執筆:杉田聖司
撮影:杉田聖司 *会場写真を除く

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