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「自分だけの『見方』をつくる」第7回 小冊子をつくる


自分だけの「見方」を冊子にまとめる
写真家の濱田祐史さんがメイン講師を務める、写真のクラス「自分だけの『見方』をつくる」。このクラスでは、濱田さんと10代の生徒の皆さんが、様々な実践や実験を通して写真表現に挑戦し、「写真」という存在を改めて捉え直していきます。そのプロセスを繰り返しながら、一人ひとりが社会に向ける「見方」のあり方を探っていきます。

9月14日(土)の第7回授業は、これまでに撮影してきた写真を冊子にまとめ、それぞれの「見方」を新たな形で表現していきます。講師にはアーティストの迫鉄平さんをお迎えする予定でしたが、残念ながら体調不良のためお休み。メイン講師の濱田さんと、コピー機を使う迫さんの手法を参考に、一人一冊の冊子づくりを進めていきました。




編集という創作行為
まずは迫さんがまとめてくださった資料をもとに、冊子そのものの歴史を学んでいきます。今回制作する冊子は、出版社や出版業界の流通ルートを通さない「ZINE」というもの。起源には諸説ありますが、1960年代頃から個人で冊子をつくる動きが生まれ、それがロンドンのパンクロック文化、アメリカ西海岸のスケーター文化、フェミニズム運動など、それぞれの文化的なコミュニティーの人々を繋ぐ手段として盛んになっていったといいます。

誰かのデザインや編集に頼らずに、自分一人でも手軽につくることができ、だからこそ作者本人の想いが詰まったものになるのがZINEの特徴だという迫さん。資料の中では、全てコピー機を使って作られたご自身のZINEも紹介されます。コピー機で写真をスキャンすることで、色や形を変えたり、写真同士を重ねてコラージュしたり、その手法の可能性を感じていきます。

6月からこれまで撮ってきた写真を選び持ち寄った生徒の皆さん。「振り返ってみると自分が興味を持っているものや、癖みたいなものが写真に写っている気がした」という声もあがります。写真を選び、並べること。「編集」というその行為を通して、それぞれの「見方」の輪郭をより見出していくことができた様子。それらの写真とコピー機を使って自分だけのZINEづくりを始めていきます。このクラスをサポートしてくれている三井不動産さんのオフィスのコピー機を使わせていただき、気兼ねなく制作に臨むことが叶いました。








新たな表現方法と出会う
コピー機の設定や印刷用紙を変えてみると、自分の撮影してきた写真に思いがけない変化が生まれます。コピー機から出てくる新しいイメージに驚きながら、新たな視覚表現の可能性と出会いながら、生徒の皆さんの編集作業の勢いは止まらず、あっという間に5時間超の授業が過ぎていきました。




それぞれの「見方」を見返す
授業の最後には、それぞれが手を動かして完成した冊子や、これから冊子になる予定のイメージ群をお披露目していきます。一人ひとり異なるイメージに生徒の皆さんもお互いに興味津々。「編集することは、もう一度撮影すること」と濱田さんが言うように、それぞれの「見方」がより明確になっていることを実感することができました。このZINEは10月に開催する展覧会で、次回から本格的に制作を始める写真作品とともにお披露目予定。ぜひご期待ください。

執筆:杉田聖司
写真:髙木紗希

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