「自分だけの『見方』をつくる」第6回 日常においてカメラを向けるということ
自分だけの「見方」を、公園で見つける
写真家の濱田祐史さんがメイン講師を務める、写真のクラス「自分だけの『見方』をつくる」。このクラスでは、濱田さんと10代の生徒の皆さんが、様々な実践や実験を通して写真表現に挑戦し、「写真」という存在を改めて捉え直していきます。そのプロセスを繰り返しながら、一人ひとりが社会に向ける「見方」のあり方を探っていきます。
9月7日(土)の第6回授業は、ゲスト講師に写真家の川内倫子さんをお招き。川内さん、メイン講師の濱田さんと共に代々木公園を訪れ、それぞれが思い思いに撮影していきます。これまでのクラスを通して「自分だけの『見方』をつくる」ことに少しずつ手応えを感じている様子の生徒のみなさん。それぞれの撮った写真を見せ合いながら、その感触をさらに確かなものにしていきました。
川内さんの写真家像に触れる
川内さんと生徒の皆さんの自己紹介から授業はスタート。川内さんからは、普段から使っているカメラや、そこから生まれた作品集などが紹介されます。記憶に残っている1枚を撮った時のエピソードや、買い換えて使い続けているというカメラへのこだわり。これまで濱田さんたちのスタイルに触れてきましたが、新たに川内さんのお話に耳を傾けることで、生徒の皆さんの写真家像がより豊かになっていきます。
川内さんの作品集から目に止まった写真を指差しながら話し込む生徒の皆さんの姿からも、これから始まる公園での撮影に向かう気持ちの高まりを感じます。川内さんの写真家像、そして写真そのものにもインスピレーションを受けている様子でした。
シャッターを切る、だけではない過ごし方
代々木公園では時間を決めて、それぞれが自由に撮影に臨みます。生徒の皆さんは、公園の中を歩き回ったり、鳩やカラスを追いかけたり、植わっている木に触れてみたり、くつろぐ人々に声をかけてみたり、カメラを片手に、撮影の時間の過ごし方は様々。また、川内さんは木々の集まるところから空の様子を観察したり、はたまた濱田さんは地面に落ちた枝や葉を寄せ集めたり、気づいたらお二人ともかき氷やジェラートを食べていたり。シャッターを切る前にある、様々な人、もの、場とのふれあいや交わりの時間をそれぞれが大切にしているように感じられました。
それぞれの「見方」を見返す
それぞれの時間を過ごした代々木公園を後にし、撮影した写真をGAKUで見返していきます。同じ場所、同じ時間、同じ気候の中でも、異なる像として写された写真たち。「動物の写真が多いね」「曲線に興味があるのかな」といった気づきから「これはどのあたり?」「何を撮っているんだろう?」といった質問など、写真を囲みながら、クラス全体で様々な会話が飛び交います。ゲスト講師の川内さんから最後には「皆さんはもう自分だけの『見方』を持っていると感じられました。ぜひこれからも撮り続けてください」とコメントが贈られます。それぞれの「見方」を後押ししてくれる時間になりました。
<生徒の皆さんが今回撮影した写真作品>
次回はzineづくりに挑戦
同じ環境の中でも、それぞれに異なる「見方」が生まれていることを実感できた今回。次回の授業では、アーティストの迫鉄平さんをゲスト講師にお迎え。コピー機を使った視覚表現を一つの手法とする迫さんと共に、これまで撮り溜めてきた写真をプリントしたり、スキャンしたりしながら、自分の手で一冊の冊子にまとめ、それぞれの世界観を表現していくことに挑戦します。
執筆:杉田聖司
写真:髙木紗希