「自分だけの『見方』をつくる」第4回 写真表現の振れ幅
様々な「見方」に触れてみる
写真家の濱田祐史さんがメイン講師を務める、写真のクラス「自分だけの『見方』をつくる」。このクラスでは、濱田さんと10代の生徒の皆さんが、様々な実践や実験を通して写真表現に挑戦し、「写真」という存在を改めて捉え直していきます。そのプロセスを繰り返しながら、一人ひとりが社会に向ける「見方」のあり方を探っていきます。
8月3日(土)の第4回授業は、授業の舞台となる日本橋周辺のギャラリーをめぐり、写真表現の振れ幅を体感していきます。複数の写真家/アーティストの「見方」に展示を通して触れつつ、その道中には自分の「見方」で街中でのスナップ撮影も。他者と自分の「見方」を行き来しながら、自分だけの「見方」を拡げたり、確かめたりしていきます。
二人の作家が捉えた時計
今回訪れたのは、写真を一つの手法として、絵画や立体、パフォーマンスなど、様々な表現手法を用いる1990年生まれのアーティストの渡邉庸平さん、そして戦後日本を代表する写真家の一人、東松照明さんの展示。
渡邉さんの展示では、異なる時間を指した複数の腕時計の写真作品と少しずつ違う構図の椅子の版画作品が並びます。生徒の皆さんからは「版画の作品も写真に見えた」「写真の特徴は複製できること。でもそれって版画とは何が違うんだろう?」と写真のそもそもを問い始める様子も。
一方で、東松照明さんの展示は戦後の長崎を写したドキュメンタリー写真群。こちらでは1945年8月9日に原爆が投下された「11時02分」で止まっている懐中時計の作品が展示されており、生徒の皆さんも当時の空気を写真作品を通して感じられている様子でした。
「見方」だけではなく「見せ方」も
写真そのものを問いただす「見方」、現実を見つめる「見方」。様々な「見方」について考えを巡らせつつ、展示会場から授業会場までの道のりもフィールドとして、撮影をしながら戻ります。その後、これまでの授業や展示の感想を改めて振り返っていきます。
「二つの展示は同じモチーフを撮っていたけど、全然違うメッセージを持っている気がした」という発見から、「自分の写真をどのように展示するのか。『見方』だけではなく『見せ方』ももっと考えてみたい」と10月に控える成果発表展に向けた感触まで。それぞれの気づきを交わしていきました。
「僕は写真を夜明け前のメディアだと思っています。これからどんな風にも変わることができる。これから始まるんです」と、濱田さんからは生徒の皆さんの制作を後押しする一言も贈られました。
次回はポートレートの撮影に挑戦
次回の授業はゲスト講師にファッションデザイナーでGAKUのディレクターも務める山縣良和さんをお迎え。主に日本橋の風景を撮影してきたこれまでとは異なり、人と向き合う「ポートレート」や「ファッション写真」をテーマに新たな切り口で撮影を行っていきます。
執筆・写真:杉田聖司