「自分だけの『見方』をつくる」第3回 現像と編集
フィルムならではの写真体験
写真家の濱田祐史さんがメイン講師を務める、写真のクラス「自分だけの『見方』をつくる」。このクラスでは、濱田さんと10代の生徒の皆さんが、様々な実践や実験を通して写真表現に挑戦し、「写真」という存在を改めて捉え直していきます。そのプロセスを繰り返しながら、一人ひとりが社会に向ける「見方」のあり方を探っていきます。
7月20日(土)の第3回授業は、濱田さんが講師を務める日本写真芸術専門学校(通称NPI)での課外授業。専門的に写真を学ぶ環境のなか、自分で撮影したフィルムの現像に挑戦することで、目の前にあった風景や光景をどのように浮かび上がらせていくのか、フィルム写真ならではの工程を体感していきます。
現像から始まる一連の工程
これまではデジタルカメラを使ってきた生徒の皆さん。今回は、事前課題として濱田さんからお借りしたフィルムカメラで撮影してきたフィルムを持ち寄ります。慣れない作業にじっくり取り組みつつ「どんな写真が出てくるのか楽しみ」「どんな写真を撮影したっけ」という声も上がります。
「現像は料理みたいなもの。写真家それぞれにレシピがあるけど、今日は僕のレシピに挑戦してもらいます」と濱田さん。現像液をつくったり、フィルムを光に当てずに専用のケースに移したり、何度も液体を移し替えながらケースを振り続けたり。現像用の「暗室」に入ることも初めての方がほとんどのなか、濱田さんやNPIの卒業生、また生徒の皆さん同士でもサポートしながら、「現像」「停止」「定着」という一連の工程を体験していきます。
失敗を失敗に留めておかない方法
現像を終えフィルムに像が浮かび上がってきたら、次はそれらの中から選んだコマを大きな紙に焼き付ける工程に進みます。
どの写真をどのように仕上げていくのか。撮るだけではない、様々な工程があることを生徒の皆さんも段々と掴んできたようです。生徒の中には現像前に光が当たりフィルムが真っ白になっている方に、濱田さんが「落ち込む気持ちもわかる。だけど、そのフィルムはもう失敗なのかな?」と一言問いかけるシーンも。成功や失敗も、美しいも美しくないも、かっこいいもかっこ悪いも。あえて立ち止まって考えさせてくれる経験が訪れているようでもありました。
焼き付ける作業では、ただフィルムを拡大するだけではなく、焼き付けるための印画紙に直接ものを置いて新たな像を浮かびあがらせたり、さらにその上にフィルムを重ねたり、生徒の皆さんそれぞれの工夫が見られます。デジタルにはない表現方法に生徒の皆さんの好奇心も刺激を受け、様々な試行錯誤が生まれていきました。
次回は写真展を巡る
授業の合間にはフィルム写真とデジタル写真の構造も解説してくださった濱田さん。「今日はアナログの魅力を知ってもらいたかった。その上で写真で遊ぶ。その先にもきっと発見があったはずです」と、授業の最後にコメントが贈られます。次回は、様々な写真家の展示に足を運び作品に触れることで、他者の「見方」との違いや重なりを見つけ、自分の「見方」の輪郭を捉えていきます。
執筆:杉田聖司
写真:髙木紗希