REPORT

関係美食論 第5回 リフレクション

誰と、どのような、関係を結ぶことが良いのか?を深める

「関係美食論」の教室は、馬喰横山のミシュラン1つ星レストラン「nôl」。シェフ 丹野貴士さんをメイン講師に迎え、東京という都市で育まれた地元の食材や生産者との出会いを通じて、美食を関係から捉え、「一汁三菜定食」という料理に落とし込んでいきます。

前回の授業では、江戸川区で小松菜を生産している「門倉農園」と、国立市で米や野菜を生産している「西野農園」を二手に分かれて訪れました。今回の授業では、2つのグループの学びを共有しながら、フィールドワークでの体験を振り返りました。

美味しい野菜の裏にある苦悩も知る

小松菜に生産物を絞り、過去にも多数の賞を受賞している「門倉農園」。「自分が想像していた農家と全く異なり、経営者としてどのように安定して適切な収益を確保できるか考え様々な工夫が施されていて驚いた」と生徒が発表。例えば、通路をなくし小松菜が敷き詰められていたり、年間を通して生産し続けるため、区画をローテーションしていたりといった土地が少ない東京ならではの工夫。また、買い手との直接取引ができる関係を結ぶことで、価格を自分で設定できる状況を作り、大切に育てた小松菜の価値を守る工夫など、多く学んだと言います。

米と野菜の生産者「西野農園」について「農家の苦悩を知り驚愕してしまった」と発表を始めた生徒。大きな土地を1人で管理しなければならないこと、東京の小規模農園では相続税の負担に太刀打ちできないことなど、課題が上がりました。これに対し、どのように私たちは生産者の皆さんをサポートできるのかという議論では、農家から直接購入する、情報を広める、収穫や種蒔の際にボランティアで参加する、などの声が上がりました。

それに対し、サポートシェフとして参加してくださる野田達也シェフが「どの回答も全て正解。皆さんが知ってくれていることだけで、生産者の皆さんはとても嬉しい。直接生産者さんのところに行き、コミュニケーションを取ることが励みになる。生産者を意識することや興味を持つこと、それを伝えることが大切だと思う」と語り、明るい未来への希望を失わないよう背中を押してくれました。

生産地を守るということは、何をして、何を守ることになるのか

東京の地産地消を、美食を再定義することで推進していく。このクラスはそのような趣旨のなかで進めていますが、現地で見聞きすることを重ねていくと、その難しさや構造的な問題の壁にぶつかります。まさに、フィールドワークがそのような時間だったように思います。そのうえで、「ミシュランシェフのようなスターシェフがいるように、スター生産者が誕生してほしい」と丹野さんが語っていたことも印象的でした。東京の自然や風景、そして生産者を守っていきたい。そんな強い共通認識をクラス全体として感じることができる授業となりました。

 

執筆・撮影:松村ひなた