「まちの中の私とみんなの居場所 -対話を育むかたち-」第7回 現地で実際にイメージしてみよう
建築アイデアの構想を携えて、改めて街を訪れる
「まちの中の私とみんなの居場所 -対話を育むかたち-」は、世界的建築家・伊東豊雄さんが主催する建築塾「伊東建築塾」との第6期目の建築のクラス。講師は、昨年度に引き続きPERSIMMON HILLS architectsの廣岡周平さんとKASAの佐藤敬さん。今年度は西小山エリアを舞台に、「私とみんなの居場所」という言葉から空間のあり方を探求し、建築アイデアを構想していきます。
2月8日の第7回では、創作の対象フィールドである西小山エリアで授業を開講。それぞれが進めてきた構想を踏まえつつ、改めて街を訪れ直すことで、アイデアをブラッシュアップしていくための手がかりを掴んでいきました。

西小山のまちづくりの実践に触れる
授業前半では、このエリアの街づくりに携わる方々から街の成り立ちや実践されている活動のお話を伺う特別レクチャーを実施しました。お話ししてくださったのは、このクラスの開講もサポートしてくださっている独立行政法人都市再生機構(以下、UR)の山本さんと斎藤さん、そして、西小山商店街振興組合代表理事の笹野さんのお三方。
「西小山は商店街や下町らしい風情のある街並みが魅力的ですが、一方で、木造の建物が多くあったり、道幅が狭かったりと防災という観点で言うと課題が多くあるエリアです。ハード面での安全性の向上と、ハードに留まらない暮らしやすさや街のにぎわいの向上。URでは、その両面でまちづくりを進める『防災まちづくり』の取り組みを目黒区と協働で行っています」と、山本さん。「支え合う心を育み」という言葉から始まる西小山地区のまちづくり整備計画や、100年前は農村だったというこのエリアの街の成り立ちや変遷について紹介してくださいました。

さらに、まちづくりの別の観点として、URで実践されている「プレイスメイキング」という考え方が紹介されます。「人の行動や活動のリサーチを通して公共空間の場の多様なあり方や使われ方を考えていくということを『プレイスメイキング』として捉えて実践しています。例えば、単に『座る』といっても色んな座り方があるし、色んな時間の過ごし方がある。そういうバリエーションを豊かに見ていくこと。そのようなことから居心地の良い公共空間を考えていくことは、皆さんがまさに今取り組まれている『私とみんなの居場所』というテーマとも重なる部分が多くあるんじゃないかと思います」と、斎藤さんは言います。

西小山商店街振興組合代表理事を務める笹野さんからは、西小山エリアで行われているまちづくりの地域実践として、住民が管理・運営を担う公園「にこまるマインパーク」の取り組みが紹介されます。「街の中に人が集えたり子どもが自由に遊べたりする空間を作るのはとても大事なことだけど、単に『公園をつくれば人が集まる』というわけでもない。実際には公園をつくることでゴミが増えてしまったり、商店街とうまく連携できず良い影響を与え合えなかったりという問題も十分に起こりうる。その中で、どうしたら公園と商店街、街とが良い関係を生むことができるかということをたくさん話し合い、住民自身が管理・運営をしていくという今の公園のあり方が生まれました」と、笹野さん。地域の学校の課外授業や発表会、ダンサーやアーティストを招いたパフォーマンスイベントやワークショップなど、地域内外の色々な人とも連携をしながら、公園のにぎわい作りに取り組まれているのだと言います。

レクチャーを踏まえつつ、生徒の皆さんからは、「再開発で新しく建つ建物はどれも高い。なぜ高いビルを建てなければいけないんですか?」「公園の管理や運営をする地域住民をどうやって募るんですか?みんなでどんな会話をしているんですか?」「公園と商店街が今後どのような関係になっていったら良いと思いますか?」と、様々な質問が寄せられます。生徒の皆さんそれぞれがレクチャーの内容と自分の構想とを照らし合わせて考えながら、街への考察を深めている様子がとても印象的でした。
講師の佐藤さんからは、「言葉の奥にあることを大切にしてほしい。防災まちづくりにおいて、『建物を燃えにくく倒れにくくする』は目的のように見えて、本当は「安心安全に暮らす」ための手段。だからこそ、西小山地区のまちづくり整備計画にも「支え合う心を育み」という言葉が置かれているよね。目的と手段。それが混同すると、何を目指したかったのかがよくわからなくなっちゃう。それぞれがアイデアを考えていく上でも、改めて意識しましょう」と、コメントが贈られました。
雪景色の中での街歩き
授業の後半では、それぞれにフィールドワークを進めていきました。前日から降雪があり寒い1日でしたが、街の至る所で雪だるまを発見したり、地域のお店の方が軒先で雪かきをしていたり、広場で子どもたちが楽しそうに遊んでいたりと、普段と異なる街の風景や人の様子に新たなインスピレーションも生まれていきました。
次回から、最終発表に向けた製作が本格的にスタート
授業の中での製作の時間はあと2回。次回の授業に向けて廣岡さんからは、「敷地を改める人も居ていい。普通考えたらこうだよね、ということの中に、考えていないプロセスがたくさんある。みんなが、よりも、まず自分がこうあってほしいと思う気持ちを大切にしてほしい。それを軸にしてほしい」と、生徒の皆さんを後押しするコメントが贈られました。
撮影・執筆:佐藤海