「まちの中の私とみんなの居場所 -対話を育むかたち-」第5回 中間発表
アイデアの中間発表会
「まちの中の私とみんなの居場所 -対話を育むかたち-」は、世界的建築家・伊東豊雄さんが主催する建築塾「伊東建築塾」との第6期目の建築のクラス。講師は、昨年度に引き続きPERSIMMON HILLS architectsの廣岡周平さんとKASAの佐藤敬さん。今年度は西小山エリアを舞台に、「私とみんなの居場所」という言葉から空間のあり方を探求し、建築アイデアを構想していきます。
1月18日に開講された第5回は、アイデアの中間発表会。講評者として、講師の廣岡さんと佐藤さんと共に、伊東豊雄さん、百田有希さんをお招きし、生徒の皆さんそれぞれの構想を模型やスケッチを通して発表していきました。
街と人との関わり合いの中で考える「まちの居場所」
テーマになっている「まちの中の私とみんなの居場所」とは、どのようなものか。「対話を育むかたち」をキーワードに、西小山の街でインスピレーションを受けながらアイデアを検討してきたこれまでの授業。中間発表会では、街への着眼とともに、それぞれのプランが話されていきました。
例えば、「元々は川が流れていた、神社に続く遊歩道空間」に着目した、「川がかつての子どもたちの遊び場だったように、遊歩道にも遊べる余白や想像力を掻き立てられるような空間をつくりたい」という構想。「商店街の脇にある、奥行きが感じられる秘密基地のような狭い路地空間」に着目した、「街なかでありながら、ほっと一息つける静かな場所があったら『みんなの居場所』になるんじゃないか」という構想。さらに、地域の喫茶店の方への自主的なインタビューを通して得た「昔から住んでいる人と新しく住み始めた人との間に壁があるように感じる」という声に着目した、「道なら誰しもが平等なはずだから、お弁当や商店街でテイクアウトしたものを食べる等、道を多目的に活用できるようにして交流の機会を生みたい」という構想も。アイデアの検討プロセスにおいても、街や人との関わり合いが生まれている様子がとても印象的です。
生徒の皆さんのアイデアを受け止めながら、それを後押しするように、一人ひとりにフィードバックを贈ってくださった講評者の皆さん。「コンサートホールで寝転がったりご飯を食べたりしながら音楽を聴く。そういう場所を僕もつくりたいと思ってるけど、提案してもいつも落とされてしまって未だに実現できていない。もし本当にそういうことをやりたいと思うのならば、建築ではなく、『活動の模型』をつくってほしい。そこにどのように人が集まって、どういう風に音楽を聴くのか。それが見えてきたら、もうそれだけで十分だと思う」という伊東さんのコメントなど、生徒の皆さんのアイデアを通じて、講評者それぞれの建築家としての職業観が窺い知れるような言葉や議論が交わされていく、非常に貴重な機会となりました。
建築を通して何を実現すべきか?
建築を通して、街や周辺の環境、そこにいる人たちとどのような関係性を結べるか。結ぶべきか。「対話の場」や「居場所」を建築的に考える上でそのようなことを大切にすることの必要性を、講評者の皆さんが強調して発言されていたように感じられ、とても印象的でした。
「建築をつくるんじゃなくて『場所をつくる』ということを大切にしてほしい。例えば、犬は部屋という概念はなく、場所ということでしかない。家のなかで1日に何度も移動して、そのとき一番居心地よく過ごせる場所を選ぶ。それは、いきものである人間にとっても、きっと同じです」と、伊東さん。
「この場所だからこそ意味のあるもの。そういう必然性があるものは代えが効かないし、他の街に持っていけない。それは人も建築も同じ。そういう建築のあり方を、ぜひみんなと一緒に考えたい」と、百田さん。
「街に関わる人を、単にサービスを受けるだけの存在にしてしまっていないか、ということを意識してほしい。街の人たちがその場作りに有機的に関われるようにするためには、どういう場のあり方があるだろうか。そういうことを考えてみてもらいたい」と、廣岡さん
「建築は、それだけで成り立つわけではなく、常に周りの環境との関係しながら展開される。例えば、建物と道がゆるやかに繋がっていくようなアイデアを考えるとき、その両方が合意の上でつくられていくことは、いかに可能なのか。周辺の家や環境との関わり方を考えてデザインするということに挑戦してみてほしい」と、佐藤さん。
次回から、製作の後半戦がスタート
これからおよそ2ヶ月後に控える最終講評に向けて、個々にアイデアのブラッシュアップを進めていきます。次回の授業は、その最初の製作の時間。中間発表でのフィードバックを踏まえながら今後の製作の方針やあり方を再検討していくような時間になりそうです。
撮影・執筆:佐藤海