REPORT

「まちの宝物と共に生きる」第6回 製作


制作の後半戦がスタート
「まちの宝物と共に生きる」は、世界的建築家・伊東豊雄さんが主催する建築塾「伊東建築塾」による建築のクラス。講師は、昨年度に引き続きPERSIMMON HILLS architectsの廣岡周平さんとKASAの佐藤敬さん。全10回の授業を通じて、羽田地区エリアを舞台に「まちの宝物」を捉えていくことから、建築や空間を構想していきます。

伊東豊雄さんをはじめとする建築家の講師陣からのフィードバックを受けながら、アイデアをブラッシュアップしていく手がかりを掴んでいった前回の中間発表。それを踏まえつつ、1月19日の第6回授業も引き続き個人製作を進めていきました。

自分のアイデアが「まちの宝物」になっていくために
「それぞれちゃんと敷地を捉えているからこそ、アイデアが既に結構具体的。だからこそ今後の製作では、そもそもなんでそれやりたかったんだっけ、と自分自身の気持ちを見つめ直しながら、さらに自由に発想を広げてほしい。こういうふうにしたら自分の暮らしとかまちとか、社会が良くなるんじゃないか?ということを改めて言葉にしてみてほしい」と、廣岡さん。

自分のアイデアをどのようにブラッシュアップしていくべきか。そもそも現状のアイデアは、このまちの「宝物」になりうる空間やしつらえを実現できているのだろうか。講師のお二人やTA(ティーチングアシスタント)の皆さんと一対一で会話を重ねることで検討すべきポイントを見出していきながら、自分自身のコンセプトや想いを確かめ、深める時間になっていきます。

例えば、「公共空間のなかで、明文化されてないけど『みんながそうあるべき』と思うことで生まれる、合意によるルールというものがあるよね。制限や禁止ではなく、そういうみんなが喜べるようなルールを、建築や空間のしつらえからどのように作り出していけるかということが、このアイデアにおいて重要な視点になるかもしれない」と、佐藤さん。「大きな道路によって生まれてしまった隣り合った家同士を隔てる境界線をなくす、ということにアプローチしようとしても、その空間だけで何かしようとしたら逆に境界を増やすことになってしまう。敷地の周辺の環境にもっと着目して、それを横断することの面白さを伝えることに着目するのが大切かもしれない」と、廣岡さん。生徒の皆さんそれぞれの、アイデアを通して実現したいことを汲み取りながら、新たな観点や問いを贈っていく講師のお二人の姿もとても印象的です。

さらに、「大学の時によく先生から、建築の形を先行させるのではなく、周辺の環境に対してどれだけリスペクトできるかが大切だと言われていました。それはつまり、それがあることでまちにどのような影響があるかということをしっかりと考えるということだと思う」という廣岡さんのコメントは、「まちの宝物と共に生きる」という今回の創作テーマにおいても、とても重要な視座であるように感じられました。


他のまちではなく、このまちの「宝物」にしていくために
「最終的に図面を描いたり模型を作ったりするのも大切だけど、それより、どういう目的でこれを作りたいか、を言葉にしていくことがとても大事。模型や図面は目的ではない。伝えるための手段。言葉を改めて考えよう。そして、その目的を改めて明確化する時に、その周辺の環境をちゃんと意識してることが重要」と、廣岡さん。

「次回、まちを歩く時、それぞれの案を確かめながら歩く人もいるかもしれないけど、自分の作ってるものがまちにとってどういう宝物になる可能性があるのか。それを考えよう。他のまちではなく、このまちで宝物になるものになってるか。ダイヤモンドも、磨かないとそれが綺麗かわからない。まちの人にとっては石ころみたいに思っているものでも、磨けば宝物になる可能性がある。それを提示できることが今回の授業において大切だと思う」と、佐藤さん。

授業の終わりには、引き続きアイデアの検討を進めていく生徒のみなさんへ、講師のお二人からエールの言葉が贈られました。


次回は、羽田地区エリアでの2回目のフィールドワーク
次回は、2回目のフィールドワーク。改めて羽田地区エリアを訪れ、実際の敷地と検討を進めているアイデアとを照らし合わせて考えながら、ブラッシュアップの具体的なイメージを掴んでいきます。さらに、羽田地区エリアのまちづくりに携わるUR(独立行政法人都市再生機構)の取り組みについて伺い、歴史背景や防災的な観点から見たまちのあり方にも触れていきます。

写真・執筆:佐藤海

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