「『私をつくる教室』をつくる」第8回 制作④
試行錯誤を重ねながらアイデアを磨く
「『私をつくる教室』をつくる」は、世界的建築家・伊東豊雄さんが主催する建築塾「伊東建築塾」による建築のクラス。講師は、昨年度に引き続きPERSIMMON HILLS architectsの廣岡周平さんとKASAの佐藤敬さん。今年度は全10回の授業を通じて、「教室」のアイデアを深めながら、実現していくことを目指していきます。
生徒同士でアイデアをプレゼンテーションし合ったり、意見交換をしたりしながら、それぞれが新たなインスピレーションを得ていった前回の授業。最終発表までの製作の時間は、今回を含めてあと二回。2月18日(日)の第8回でも引き続き模型の手直しを進めていきながら、アイデアを磨いていきます。
まだ見ぬ教室のあり方を形にする
「私をつくる教室」というテーマ。単なる「教室」ではなく「私をつくる」ための学びの空間だからこそ、それぞれのアイデアの出発点となるのは、「これをもっと知りたい、突き詰めたい」といった個々の興味関心であったり、「『学び』とはこういうものだ/こうあってほしい」という切実な想い。生徒一人ひとりがまだ見ぬ教室のあり方を見つめ、思い描いてきたからこそ、それを建築物として形にする方法を考えていく上では様々な課題も生まれていきます。生徒の皆さんは、講師のお二人や建築学生等からなるTA(ティーチングアシスタント)の皆さんの力も借りながら、それぞれ試行錯誤を重ねていきます。
例えば、「居心地が良い空間にするために床面をなめらかで柔らかい局面にしたい」というアイデアにおいて、自分の思い描く質感を実現するために、紙粘土にのりや水を混ぜたり、素材を組み合わせたりしながら検証する。例えば、「公園の中で『教室』を展開したい」というアイデアにおいて、敷地の具体的な大きさや環境を考えていくために、実際に公園の模型を作って理想の敷地のあり方を再現する。例えば、「室内にいながら空を感じられるようにするために天井をオープンにしたい」というアイデアにおいて、雨や日差しとどのように付き合うか?ということを考えていくために、建物全体の構造や素材を検討しながら、「そもそも、なぜ空を感じられるようにしたいのか」という自分自身の想いを見つめ直す。
地道な検証を重ねながら、思い描くことと形にすることを同時に進めていくことの難しさに直面していく生徒の皆さん。一方で、その試行錯誤によってアイデアが思いもよらない方向に広がっていったり、逆により深まっていったりという、クリエーションの醍醐味を感じているようでした。
自分の実感が込められているか
「模型が完成したら、写真を撮って確認してみよう。切り取ることで、その中に自分の言いたいことが現れているかということを確かめることができる。大切なのは、模型を作り上げることではなく、自分のアイデアや想いを伝えていくこと。そのための方法を考えよう」と、廣岡さん。
「自分のアイデアにタイトルをつけよう。タイトルは、自分の実現したいことを一言で表すもの。それはわかりやすい言葉であることももちろん大切だけど、自分の実感を伴っているかということを何よりも意識してほしい」と、佐藤さん。
講師のお二人からは最終発表会に向け、アイデアを伝えていくための視点も含めたコメントが贈られ、授業が締めくくられました。
次回は、発表前最後の授業
授業の中では、次回が最後の製作の時間。模型の仕上げ作業とともに、プレゼンボードの製作を進めたり、伝えたいことを改めて言葉にしていったりと、最終発表に向けたプレゼンテーションの準備も進めていきます。
(写真・執筆:佐藤海)