「この町を大事に思えるキオスク」第2回 フィールドワーク
創作の舞台となる渋谷川沿いでフィールドワーク
「この町を大事に思えるキオスク」は、世界的建築家・伊東豊雄さんが主催する建築塾「伊東建築塾」による建築のクラス。講師には、PERSIMMON HILLS architectsの廣岡周平さんとKASAの佐藤敬さんをお招きし、11回の授業を通じて実際に暮らしのなかにある売店「キオスク」のアイデアを実現していくことを目指します。
前回の初回授業では、身の回りのものを建築に見立てることで建築を自由に捉えていくことを実践していきました。10月30日(日)に開講された第2回では、今回の創作の舞台となる渋谷川沿いエリアでフィールドワークを実施。今回は、実際の敷地からインスピレーションを受け取りながら建築的な発想を広げていきます。
建築家と一緒に敷地を歩いて学ぶ
舞台となるのは渋谷川沿いの全長600メートルの遊歩道「渋谷リバーストリート」。「建築をつくる上で、敷地選びはとても重要なもの。じっくり観察して、『ここで商いをしたい』と思える場所を見つけてほしい。その入り口として、自分が一番ポジティブに感じられたり、好きだと思えたりするものを探してみよう」と、廣岡さん。「フィールドワークは、目だけじゃなくて想像力が大切。じっくり観察して、その場にどんな歴史があるのか、そこにはどんな人が暮らしているのか、目に見えない部分まで自分なりに想像をはたらかせてみると、自然と見え方も変わってくるはず」と佐藤さん。まずは、フィールドワークでのインプットをより深いものにしていくためのアドバイスを受けます。
「この遊歩道は昔、鉄道が通っていた場所。駅のホームがあった跡が残っていたり、鉄道をイメージした柱や白線のような印があったり。よく観察すると歴史の痕跡を見つけることができる。そういう場所の特徴と、その理由を掴んでみよう」「その場にあるものの新しい使い方を考えてみよう。例えば、このフェンスにはハンガーが引っ掛けられそう。階段は少し高低差があるだけで人の顔が見やすくなるから、もしかしたら大勢で何かを鑑賞する場として向いているかもしれない。その場にあるものをなんでも利用しちゃうくらいの気持ちで考えてみよう」と、フィールドワーク中も講師の方々からたくさんの問いを投げかけられることで、観察する視点が広がっていく様子が印象的でした。
自分の商いの場所を、自分の足で探す
一人ひとりが観察しながら写真を撮って回ったフィールドワーク。その結果を写真とともに発表します。
「ひらけた道の脇に植物が茂っていて、少し暗いけど穴蔵みたいになっている場所が居心地が良くてすごく好き。この場所をポジティブに捉えられるようなものを考えたい」「川沿いに建物の裏側がずらっと並んでいるのが面白い。普通は、その裏側をこんなにたくさん見ることができないと思う。その壁にいろんなアート作品が並んだら、散歩をもっと楽しめそう」「遊歩道が広々としていているし、こんなにまっすぐ見通しが良いところも珍しいと思う。遊歩道以外の面白い使い方を考えてみたくてみたくなった。ファッションショーのランウェイやスポーツのグラウンドにするのはどうかな」と、生徒の皆さん。敷地そのもののしつらえ。周辺の建物と敷地との関係性。敷地の中で行われている営みや歴史。様々な観点からのアイデアがみられました。
創作の軸となるものを手にすることの大切さ
第1回の授業では、「『商い』とは、自分が良いと思っているものを誰かに共感してもらいたいという想いから生まれるもの。だから、楽しんでもらうために工夫をしたり居心地のいい場所にしつらえたりする。そういうものの蓄積が、いい町を作っていくんじゃないかなと思っています」と、商いと町の関係性を説いていた廣岡さん。そのスタートラインを「自分が一番ポジティブに感じられたり、好きだと思えたりする」という素直な気持ちに置いています。
今回の発表でも、子どもたちが腹の底から本当に心が動かされているかどうかというところも重要視していきます。「人それぞれ個性があるから、全ての人にとって良いものを考えることは難しい。だから、まずは自分の気持ちが動くものをおさえていく。それが創作の軸になるはず。そして、それはきっと他のひとたちにとっても実は大事かもしれない。そこから、それを他の人と共有するときにどういうアクションが必要かを想像していけば大丈夫。そうやって一つずつ考えていこう」と、一人ひとりの想いを真正面から受け止めていくことで、生徒のみなさんも自分自身の心象への意識が磨かれていっていくようでした。
次回は「キオスク的」な空間をリサーチする
身の回りのものを建築に見立てることで建築を自由に捉えていくこと。実際の敷地からインスピレーションを受け取りながら建築的な発想を広げていくこと。この授業では、様々な視点から建築を捉えていきます。次回までの課題として、個々が自分自身の生活の中でのフィールドワークをしてくることが求められました。それは、街の中にある「商いの空間や商いに関する場所、商いを通して生まれている空間」の写真を撮ってくるということ。生徒それぞれが創作していくにあたって必要となる土台を、しっかりと形作っています。