「東京芸術中学」第54回 伊藤弘さん
自分だけの世界観を一冊のZINEに
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。11月13日はデザイナーの伊藤弘さんによる2回目の授業です。伊藤さん率いるデザインスタジオ「groovisions」の作品集についてご本人から解説いただいた前回。一冊の本に綴じられた伊藤さんの世界観を体感していきました。そんな授業を踏まえ、今回は生徒の皆さんがそれぞれの世界観をまとめたZINEを制作し、その成果を発表しました。
デザイナーと編集者の視点から実践的なアドバイスも
コロナ禍の2年間を撮りためたドキュメンタリー写真から、街中の人に声をかけて靴だけを撮影したスナップ、自分の表現したい世界観を集めた資料集やイラスト集、14もの物語を書き上げた短編小説集など。中には、折りたたまれた冊子を広げると大きな地図になるという工夫を凝らした一冊も登場していきます。
それぞれの発表を終えて、伊藤さんと菅付さんからのフィードバック。「タイポグラフィが本の内容と合っていていいね!」「写真を撮った人にインタビューしたら客観的な視点も加わっていいんじゃないかな?」など、デザイナーの伊藤さんと編集者の菅付さん、それぞれの視点から実践的なコメントやアドバイスが贈られていきます。時には「本屋に持っていったらどうだろう?きっと面白がってもらえるはず!」そんな声も。講師のお二人もグッと惹きつけられる本が次々に発表されていきました。
クリエーションの基本はルールづくりから
「写真を同じ構図で撮ったり、文章を100文字以内に収めたり。今回の課題にはみんなオリジナルのルールがあって、それに基づいたパフォーマンスがZINEになっています。世界観をつくりあげるそのルール化って実はなかなか難しいのでとても関心しました。」と伊藤さん。「自分の世界を明確にすることはクリエーションの基本。そのためのルールをつくればこれからいくらでも発展できるんです。」と菅付さん。それぞれのZINEの裏側にある「ルール」について総評してくださいました。
どうしたら客観性が身につきますか?
「zineを通して自分の世界観はつくれたけど、逆に客観性が欠けている気がします。どうやったら客観性が身につきますか?」最後には、生徒の方から伊藤さんに質問が投げかけられます。「客観性は膨大な情報をインプットすることから始まります。もちろんクリエイターとして必要なテクニック。だけど向き不向きもあるので、客観性が必ずないといけないものではない。それよりも、誰に何を言われようとも、自分が夢中になれるものを続けていくことのテクニックの方が重要。それは客観性を上回るものです。」と伊藤さん。生徒の皆さんの背中を押すようなそんなコメントで授業を締めくくってくださいました。