「東京芸術中学」第53回 森永邦彦さん
デジタルの視点でファッションを捉える森永邦彦さん
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。11月6日の講師はファッションデザイナーの森永邦彦さんです。「A REAL-日常、UN REAL-非日常、AGE-時代」をコンセプトに掲げるブランドANREALAGEを手がける森永さん。日常が様変わりした私たちにとってデジタル上に広がるの仮想世界がより身近になったと言います。今回はそんな森永さんの視点を通して、ファッションのあり方を今一度捉え直し拡張すべく、生徒一人一人がデジタルドレスの作成に挑戦します。
現実世界と仮想世界、2つの対極に広がる可能性
授業はまず、ANREALAGEの最新コレクション「DIMENSION」について森永さんご自身から解説。「現実世界/仮想世界」、「3次元/2次元」をテーマにパリコレクションにて発表した映像を観ていきます。実物のドレスを着たモデル、デジタルドレスを着たアバター、そのどちらもが同じショーを歩く映像は、まさに現実世界と仮想世界の境界線を超えた、新しい服のあり方を表現しているようでした。
続いては、そんな映像を仮想世界の中で体験するVRキットをつかったメタバース体験です。初めての仮想世界に触れながら、これから生徒の皆さんが制作するデジタルドレスがこの世界でどのように見えるのか、どのように着られるのか体験してみます。メタバース体験の後は、映像の中でモデルが着用したドレスの実物の見学。三角形の布を平面で組み合わせ立体をつくるそのドレスは、ペンライトの光を当ててみると三角形の布が光を反射し全く別の色に。「全く違うものを見てるみたい!」「初めて見る色!」そんな驚きの声をあげていきながら、現実世界のファッションの魅力も改めて捉えていきます。
デジタルドレスの制作に挑戦
諸々の講義や体験をした後、いよいよ、デジタルドレスの制作に挑戦です。生徒の皆さんに配られたのは、大きな紙に印刷された人型シルエット1枚、三角形の厚紙200枚、そしてANREALAGEのオリジナルテキスタイル30種類。三角を組み合わせ、平面の人型シルエットに重ね、そこにテキスタイルを貼り付けることで、自分だけのデザインをつくっていきます。「なんだかパズルをやってるみたい。」「人型からはみだしたらフードも作れそう!」「みんな似た形になっちゃうからどう変えよう?」中には三角形を細かく切って張り付けたり、あえて極端なアシンメトリーなデザインをしたりする生徒も。それぞれおもいおもいにデザインしていきます。
変わり続ける日常、これからのファッション
「今みんなが生活している世界って現実の世界だけじゃない。スマホやPC上のデータとしての自分が存在するし、そこにはファッションも存在するはずなんです。」、「デジタルドレスの制作を通して、いつもみんなが着ている服がどれだけ計算されて作られているかもきっとわかるんじゃないかな。」。そんな森永さんのコメントは、現実世界でも仮想世界でも、私たちとファッションの関係性が変わりつつあるという実感を持たせてくれます。
生徒の皆さんによるデジタルショー
生徒の皆さんが作業に熱中する中、今回の授業は終了。日常が変わっていくと同時にファッションの在り方も変わっていく。私たちにとってファッションがなくてはならない存在であること、そしてその可能性を再発見する授業となりました。12月に控える次回の森永さんの授業では、今回制作したデザインをデータに変換し、仮想世界の中でデジタルショーを行います。