「東京芸術中学」第47回 矢後直規さん
美術館のようになったGAKUの教室で授業がスタート
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。2021年9月25日(土)の講師は、アートディレクターの矢後直規さん。広告からアパレルまで、幅広いフィールドで活躍されています。矢後さんは、『芸中』が開講して1人目の講師として昨年登壇され、開講当初からの生徒のみなさんとは約1年ぶりの再会となります。受講生のみなさんに全身で感じてもらいたい。そんな想いから、GAKUの壁中にポスターが張り巡らされ、なんと原画も持ち込んでくださいました。さながら美術館のような空間のなかで、受講生へ言葉が投げかけられていきます。
矢後さんの頭の中を全部覗いて、熱にふれる
「今日は僕自身の考える表現について話します。そこから何かをつかみ取ってほしい。」そんなコメントから講義はスタート。完成させられた作品はもちろんのこと、その制作の裏側や過程も含めて、クリエーションの一部始終を惜しみなく解説。手がけられたラフォーレ原宿の広告制作のエピソードでは、ご自身でも読み返すことのできないほどの走り書きのメモや、何枚も描き続けたラフスケッチ、会議室の一角での衣装合わせなど、クリエーションの現場のリアリティが迫ってきます。また、アートディレクターとしての矢後さんのみならず、フォトグラファーやスタイリスト、ダンサー、書家など、様々な分野のプロフェッショナルがそれぞれのクリエーションを持ち寄って作品が完成していく様子に受講生のみなさんも自分の興味関心と照らし合わせて聞き入ってるようです。
一人の表現者として社会と向き合う
クリエーションの日々の様子を丁寧に解説してくださるなかで、コロナ禍での心境の変化にも話が及びます。そのなかで、「もし1人になったら何ができるだろう?」「グラフィック、タイポグラフィー、写真、ドローイング、どの要素でも『これは矢後の作品だ』と感じてもらうためにはどうしたらいいんだろう?」という自分自身への問いかけが深まっていたそう。そこで1日1枚、必ず自分の手でドローイングを完成させるというルーティーンが生まれます。はじめは思うようにいかない。でも「新しい表現を追求したい」という気持ちがエンジンに。今では、その取り組みが新たな仕事につながったり、手描きを続けていたらパソコンでの描画にも変化がおきたりと、思いがけない手応えもあるそうです。「誰かに評価されている訳ではないけど、自分の手からしか生まれない、自分が良いと思うものを発表することから新たなプロジェクトが始まっていきました。」そんな矢後さんの試行錯誤が受講生により伝わるようにと、20時間を超えるご自身のクリエーション作業の様子を早回しで紹介してくれた映像は圧巻でした。
矢後さんの仕事を10代が追体験する課題
「もっともっとパーソナルな表現をしたいと思ったんです。」、「自分の理想やイメージを超えられる瞬間なんて、そんなに何度もない。」「まずはやってみること。そうすれば『これは違うな』ということだけでも気づくことができる。途中は苦しくても、それが新たなクリエーションを導きだす一筋の光になる。」など、一人の表現者としての生き方に触れる生の声に聞き入りながら、矢後さんからの制作課題が発表されます。それは、ラフォーレ原宿の広告を受講生それぞれが制作するというもの。自身のクリエーションに向き合う矢後さんの姿と作品を感じた受講生のそれぞれがどのような試行錯誤をひろげていくのか。来月に控える発表が楽しみです。受講生とクリエイターの講師の方が、授業の前後に立ち話のように会話をできるのもGAKUの魅力の1つ。1年ぶりの再会を果たした受講生の1人がプロとしてデザイン仕事を受けれるようになったことを矢後さんに報告するシーンも見られました。授業からはみ出る時間もGAKUの醍醐味。ぜひ、いろんなことを話しかけてみてくださいね。