REPORT

「東京芸術中学(第6期)」第4回 色部義昭さん

現代アートに引き込まれる
編集者・菅付雅信さんと13人のクリエイターによる『東京芸術中学』(通称「芸中」)。このクラスでは、菅付さんの著書「インプット・ルーティン 天才はいない。天才になる習慣があるだけだ。」を実践するかのように、膨大なインプットとしてのレクチャーとともに、それらを基にしたアウトプットとしての実践的なクリエーションが重ねられていきます。

それらの「習慣」をより豊かなものにしていくために、絵画・音楽・ファッション・写真・絵本・デザイン・クリエイティブディレクションなど様々な分野を牽引するゲスト講師による知見や経験が持ち寄られ、更には、生徒のみなさんのクリエーションと向き合いながら講評の機会も大切にされています。こちらのレポートでは、それらの様子をダイジェストでご紹介していきます。

6月6日は、60年以上の歴史を誇る広告・デザイン制作会社「日本デザインセンター」で特別授業を開講。グラフィックデザイナーでアートディレクターの色部義昭さんをゲスト講師に、デザインが生まれる現場からお話をいただくことで、デザイナーという仕事に迫っていきました。

日常をかたちづくるデザインが生まれる場所
トヨタのロゴ、アサヒビールの缶、そして言葉を使わずに情報や意味を伝えるための図記号「ピクトグラム」など、日常生活の中で私たちが見慣れた、馴染みのあるデザインの多くが実は「日本デザインセンター」が手掛けた作品。これらの作品とともに、創設67年を迎える日本デザインセンターの歩みを振り返りました。

その後、直径6.5メートルある丸テーブルが特徴の図書館も見学。コレクションされてきたアートやデザイン関連の蔵書がびっしりと並ぶ風景は圧巻です。私たちが日々目にする色や形の背後には、歴史や思想の蓄積があることを実感する機会となりました。

唯一性をデザインすること
特に印象に残ったのは、Osaka Metroのブランディング事例です。市営地下鉄から民営化へ移行するタイミングで、単なるロゴの刷新ではなく、人々の意識の切り替えを後押しする役割も求められていたといいます。世界中の鉄道会社をリサーチしたうえで、「見つけやすさ」という機能性と、世界にひとつしかない存在としての独自性を両立させていくプロセスが紹介されました。街の風景の一部となり、人々の生活を支えるデザインだからこそ、数年先ではなく長期的な視点で考える必要があります。その責任の重さと、綿密なリサーチの重要性を感じました。

また、国立公園や新宿御苑、市原湖畔美術館などの事例からは、場所の魅力や固有性をどのように可視化するかという視点を学びました。環境そのものを活かしながら、その場所らしさを際立たせる。「余計なものを削ぎ落とし、本質だけを残すこともまたデザインの力です」と色部さん。

最後には質疑応答も。特に印象に残ったのは「明るさや感情を表す色は国によって変わるように色のイメージは様々ですが、色部さんが怖いと思う色は?」という質問です。これに対し色部さんは、「色は単体で意味を持つのではなく、形や質感と結びつくことで印象が大きく変化します。実際にOsaka Metroの青にもわずかに赤みを加え、大阪らしいエネルギーを表現。デザインを考える際には、色を装飾として扱うのではなく、その色が持つメッセージや役割まで深く考える必要があることを僕もこのプロジェクトで学んだんです」と回答し、授業の締めくくりとなりました。

 

東京芸術中学(第6期)クラスページはこちら

 

執筆・撮影:松村ひなた