REPORT

「東京芸術中学(第4期)」第24回 武田鉄平さん


武田鉄平さんの展示『まるで、花のような』を体験
編集者・菅付雅信さんと13人のクリエイターによる『東京芸術中学』。11月30日は、アーティストの武田鉄平さんによる第一回目の授業。

この日は、武田さんの個展『まるで、花のような』が開催中だったため、GAKUと同じ渋谷の神宮前に位置するMaho Kubota Galleryに集合しました。立体感のある抽象的な花の数々。生徒の皆さんは、作品に近寄ったり、横から眺めてみたり、どのようにして作品が生まれたのか、興味深々な様子。武田さんご本人に展示を案内してもらうという貴重な体験となりました。



絵画史を通して、武田さんの世界に触れる
授業の後半ではGAKUに戻り、レクチャーを通じて武田さんがなぜこのような作風で作品を作るのか、絵画史的な観点から触れていきました。

1827年にニエプスが写真を発明した頃に立ち戻り、写真の誕生が、いかに絵画のあり方に影響や変化を与えたか理解していきます。そもそも絵画は、写真の代わりにある瞬間を記録するような役割を担っていましたが、写真の誕生により、絵画が写実的でなければならないと社会習慣から少しずつ自由になっていく様子を確認します。例えば、ゴーギャンのように自由に色を表現する作品や、ピカソのようにカタチを解体し、リアルな瞬間を記録することから離れた作品が生まれていったこと。そして、ボッチョーニやカンディンスキーのように、もはや対象物を描くのではなく、時間やエネルギーなど動きを表現するようになっていたこと。そして、ダダイズムやウォーホールに触れたあと、武田さんの作風に影響を与えたフォトグラファー、トーマス・ルフの作品に触れていきました。

トーマス・ルフの有名な作品の一つ、「Porträts(ポートレート)」シリーズ。これは、著名人ではなく、どこにでもいそうな複数の一般人を大サイズの写真作品として提示することで、逆にそれぞれの個性を際立たせている作品で、この考え方を武田さんの作品にも応用させているそうです。さらに「jpegシリーズ」を見たときに『ずるい!』と衝撃を受けたと言います。このシリーズは、あえて低画質で大きなサイズに出力されています。「これを絵画的に作れないかと試行錯誤を始めたんです。だから、僕の最初の頃の作品はカクカクしているんですよね」と武田さん。試行錯誤の段階から完成までの流れを見せてもらうと、10以上のパターンを経て最終形が生まれていることがわかります。「絵具を盛るところからスケッチを探っていき、ものによっては1ヶ月ほどかけることもある」と語りました。

「まだまだやりたいことがたくさんある。変化の途中にいると思う」という武田さん。「ある人から、絵画なんて終わったと言われたことがある。だから今やるべきだと感じた。芸術に近そうに見えて、遠いものが絵画。だからこそ、今やることに意味がある」と語りました。



課題は「要素を絞った自画像を描く」こと
授業の最後に武田さんから出た課題は、「要素を絞った自画像を描く」こと。A3以上のサイズで、色や形を絞るなど、自分なりに制限を設けて自画像を描いてもらいます。画材は自由です。「ダメな絵は存在しないので、自分なりに自由に描いてきてほしい」という武田さんの言葉で授業が締め括られました。授業後には、武田さんの画集のサイン会も開催されました。

執筆・写真:松村ひなた

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