「東京芸術中学(第4期)」第17回 片山正通さん
インテリアデザイナーのリアルな職場を見学
編集者・菅付雅信さんと13人のクリエイターによる『東京芸術中学』。10月5日は、インテリアデザイナーの片山正通さんが率いる「Wanderwall」のオフィスを訪ねました。片山さんがインテリアデザイナーになったきっかけなどのお話しを伺い、後半ではまるで美術館のように魅力的なオフィスを見学させていただきました。
片山さんの個人史をたどることで学ぶ
授業は、片山さんの生い立ちを伺うところから始まりました。「岡山の田舎から出たくて仕方なかった」という片山さんは、家具屋に生まれ、学生時代は野球やバンドに励む少年だったそうです。高校卒業後、専門学校に行くため大阪に出ていきました。その後は、デザイン会社に入ってみるものの5年で4つくらいの会社をやめ、友人と自分で会社を作ろうということに。創設時は景気がよかったもののバブル経済が弾け、思ったような仕事が来ず苦しい時期を過ごしたこともあったそうです。
転機は、30半ばくらいの時にファッションブランド「ベイシングエイプ」のデザイナーNIGO氏からの依頼でショップをデザインしたこと。仕事で初めて「自由にやって良い」と言われ嬉しかったものの、実際に取りかかってみるとデザインが浮かばず、自由の難しさにぶち当たったと言います。「勝負のときだった」というこの機会に、アトラクションのような楽しい場所を作ろうと思い切ってデザインし、訪れるお客さんが乗り物に乗るような体験を提供しようと考えました。結果、この店舗は大きな話題を呼び、今でも語り継がれています。
バー「BANK」や竈門神社の授与所、APC、ピエールエルメ、SUMSUNG、そして海外のユニクロ店舗のデザインなど、片山さんが手掛けたお仕事を見ていきました。「見てわかるように、僕のデザインはひとつひとつ異なります。デザイナーは個々のスタイルを確立することでブランディングをしていくけれど、僕にはそれができない」と片山さん。悩んだこともあったそうですが、後に「それが俺の特徴だと開き直った」と笑顔で語ります。仕事の依頼をもらうたびに、どうするとクライアントが喜んでくれるか、そのお店やブランドが次のステップに進めるか、と毎回ゼロから考えていくそうです。
遊び心が詰まったオフィスで夢を話す時間
授業の後半では、片山さんにオフィスツアーをしていただきました。至るところにアート作品や世界中から集められたオブジェなどが並ぶオフィスに、生徒の皆さんも興味津々の様子でした。
最後に、片山さんは生徒の皆さんひとりひとりに将来の夢を聞きました。それぞれの話しに耳を傾け、背中を押すような優しい言葉をかける姿が印象的でした。
執筆・写真:松村ひなた