「東京芸術中学(第4期)」第16回 柴田文江さん
プロダクトデザイナーという仕事を紐解く
編集者・菅付雅信さんと13人のクリエイターによる『東京芸術中学』。9月28日は、プロダクトデザイナーの柴田文江さんによる1回目の授業。柴田さんが手がけてきた数々のプロダクトや、彼女の原点となる記憶や学生時代に触れながら、プロダクトデザイナーという仕事を捉えていきました。
感覚的に考えるが、つくるときは論理的に考える
「プロダクトデザインは、手でつくるもの」と柴田さん。武蔵野美術大学で講師を務める柴田さんは、「多くの学生が言葉という論理的な手段で考えてしまうため、カタチという感覚的なゴールにジャンプできない」と語ります。デザイナーは「感覚的に考えるが、つくるときは論理的に考える」ことが必要だと語る柴田さん自身も、学生時代はカタチがわからず苦しんだそうです。
ターニングポイントは、大学3年生のときのアイロンをデザインする課題。造形学科にいた友人を訪ね、金工工房に遊びに行くと皆がコーヒーポットを模刻する課題に取り組んでおり、その様子を遠くから眺めていた柴田さんは、皆のポットのカタチが歪だと客観的に感じたそうです。そのとき、「この客観的な視点で自分のアイロンを見れたら何かが変わるかも」と思い、自分の作ったカタチのバランスを直していく方法を見出せたと言います。「大抵、美の基準は自分の中にあるけれど、それをカタチに結び付けられないが、これがカタチに対する習得を感じられた瞬間でした」と語りました。
プロダクトデザイナーとしての柴田さんの仕事は、金型をつくること。「工業デザインは堅くて味気ない印象があるが、堅い金型を使って、生きているようなプロダクトを作りたいと思っている」と自身のビジョンを語ります。倉俣史朗やフィリップ・スタルク、吉岡徳仁など世界を代表するプロダクトデザイナーの作品を解説しながら、チェコのボヘミアグラスを使用したランプやヘルプマーク、カプセルホテルなど、柴田さん自身の作品も紹介していきました。
デザインをやってみる
授業の最後に柴田さんから出た課題は、「ソルトアンドペッパーをデザインする」こと。アイデアをスケッチすることと、粘土や紙を使ってモックアップをつくることも課題に含まれます。「カタチの背景を考え、どこで、誰が、どんな風に使うのか考えてみよう」と柴田さん。料理中にキッチンで使うのか、卓上なのか、それとも持ち運べるものなのか。生徒の皆さんの自由な発想による、独自のソルトアンドペッパーが次回の授業で並ぶのが楽しみです。
執筆・写真:松村ひなた