「東京芸術中学(第4期)」第12回 ワークショップ「言葉の編集」①
他己紹介を通して言葉の編集を実践する
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。7月27日(土)は、本授業が夏休みに入る前の最後の授業ということで、芸中ディレクターの菅付さんによるワークショップ「言葉の編集」を開講。リラックスした雰囲気の中、2人1組でのインタビューを通して、「他己紹介」を行いました。
社会を築く言葉
授業は「言葉ってなんだろう?」という問いから始まりました。「人間と動物の決定的な違いは言葉を持つこと。言葉こそが、人間を人間たらしめているもの」と菅付さん。書く、聞く、話すなどの言葉の機能が説明され、「言語の究極の目的と成果は、コミュニティ、文化、社会を築くこと」という言語学者のダニエル・L・エヴェレットの一節が紹介されます。
そのような言葉を使いこなすためにも、菅付さんが推薦するのは「読む」こと。「映像を見たり、スマホなどデジタルデバイスで記事を読むだけではなく、本、雑誌、新聞を毎日少しずつでも読むことが大切」とし、「言葉をしっかり読み込み、自分なりに意味を理解し、自身の意見を持って読んでほしい」とメッセージが贈られます。「大きな本は家で、小さくて軽い本は持ち歩きで、並行して読むのがいい。1日2時間は読むことで、ボキャブラリーが増え言葉の力をつけることができる」と、日常の習慣に落仕込むための工夫も語られました。
より良く聞くことと話すことの難しさ
「聞く力」と「話す力」にフォーカスした「他己紹介」のワークショップを実施。2人1組になり、15分ずつの相互インタビューでお互いがどんな人なのかを探り、それを短いテキストにまとめて授業の最後に発表します。良く話すためには、良く聞くことが求められます。良く聞くためには、相手の話を受けて質問などをしっかり話すことが求められます。聞くことと、話すこと。シンプルなようで、よく考えてみると意外と難しい他己紹介。言葉についての理解を実践的に深めていきます。
課題は「自分の周りにいる大人のインタビュー・ノンフィクションを書く」こと
夏休みの宿題として菅付さんから出された課題は、「自分の周りにいる大人のインタビュー・ノンフィクションを書く」こと。インタビュー対象者は、大人であれば家族でも、カフェのオーナーや部活のコーチなど、誰でも構いません。インタビュー時間は2時間。インタビュー前にしっかり下調べを行うことや質問表を作成すること、インタビュー中に録音をすること、文体を揃えることなど、インタビューや執筆の心得と共に、「一番大切なことは読み手がグッとくる原稿に仕上げること」と菅付さんは語りました。
執筆・写真:松村ひなた