REPORT

「東京芸術中学(第4期)」第8回 卯城 竜太さん


課題は、簡単にアートをつくること
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。6月29日は、アーティスト集団「Chim↑Pom from Smappa!Group」(以降「Chim↑Pom」)のメンバーでキュレーターの卯城竜太さんによる2回目の授業。今回は、課題の発表を行います。前回の授業で卯城さんから発表された課題は「簡単にアートをつくる」こと。制作時間は1時間というルールが設けられました。



簡単につくるからこそ、そこに帯びる個人の存在
前回の卯城さんの授業で、「Chim↑Pom」がこれまでどのような「簡単な」手法で「公共」に疑問を投げかけてきたのかを学んできた生徒のみなさん。現代アートにおけるルールやコンセプトの大切さについても触れたことから、今回の発表でも皆さんそれぞれの強い意志やテーマが伝わってきます。

「自分が書いたゲシュタルト崩壊を他者は理解できるか」というテーマのもと、1時間ひたすら「あ」を書き続けた作品。風通しを良くしたかったということでぶち抜かれた壁の上に絵を描いた重量感のある作品(発表のためにGAKUに運ぶのに苦労もしたそうです)。購入した花を、あえて茎と葉っぱだけにして撮影した作品。甘い食べ物が禁止されていたり、お菓子の缶を大切にしていた子ども時代の記憶を表した作品。家にあった置物たちに使わなくなったマスクをつけることでオブジェ化させた作品など。

ひとりひとりの発表を真剣に聞き、驚いたり、大きくうなずきながら笑ったりする卯城さんの姿に触発されて、言葉が次々と出てくる生徒の皆さんの様子が印象的でした。また、作品をどこに展示するか尋ねたり、即席でタイトルを考えさせたりと、個人的な想いが大切にされた作品が、社会のなかでどのように意味や意義を帯びていくのかということの一端に触れているようでもありました。


アートはそんなに難しくない
卯城さんが芸中で講師を務めるのは、今年で3回目。「実際に1時間で作品を作ってもらったことで、アートはそんなに難しいことではなく、やろうと思ったらできることなんだと分かってもらえたんじゃないかな」と課題の意図を明かし「プロになると、実際に大きなことをやらなきゃいけなくなり、行動に移せず躊躇してしまうこともあるけれど、今日みたいに『やってみちゃいました』という作品が成立するのがアートの価値だと改めて感じた」と総評しました。また、「とても入念に緻密に考えてきてくれて、それが作品からも感じられました」と皆さんを励ましました。

執筆・写真:松村ひなた

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