「東京芸術中学(第4期)」第6回 高速クリエーション史①
芸術史のターニングポイントを掴む
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。6月15日(土)は、芸中ディレクターの菅付さんによる「高速クリエーション史」の前半を開講。クリエーションの歴史を2回に分けて学びます。それぞれの時代に新しい考え方が生まれる瞬間、つまり「ターンニングポイント」があり、これを中心に人類は何を生み出しどのような考え方が形成されてきたのかを紐解いていきました。
なぜ歴史を勉強するのか?
「なぜ歴史を勉強するのか?」この問いから授業はスタート。哲学者・記号学者のウンベルト・エーコや文化人類学者アンドレ・ルロワ=グーランの言葉を紹介しつつ、「歴史=あらゆる文化文明のベースを知ること」とし、「過去を知らずに文化文明的なクリエーションはできない」と歴史こそが未来を見据えるための情報源だと管付さんは強調します。さらに、「新しいテクノロジーによって生まれた概念が、新しいクリエーションを産む」という視点から、芸術史を遡っていきました。
人類の営みとしてのクリエーション
まず最初に、人類最古のクリエーションとして紹介されたのが「アルタミラ洞窟壁画」。自然界に存在していた「火」を用いた「ランプ」を発明したことにより、人類最古の絵画作品が誕生したそうです。そこにもテクノロジーとクリエーションの関係性や、「難しいことに挑戦するときこそクリエイティブになる」という人間のあり方を管付さんは見出していきます。
さらに、メソポタミア文明の「シュメールの粘土版」やエジプトの古代文字「ヒエログラフ」や古代の紙「パピルス」を事例に、文明にとって重要な文字というものがそれを残すためのテクノジーとも深く関係していることも確認していきます。その他にも、ギリシャ・ローマ文明時代の哲学者の功績、宗教の誕生と役割、日本独自の文化や価値観の発展など、膨大なトピックを取り上げながら、人類がその営みのなかで様々なクリエーションを重ねてきたことを概観していきました。
「高速クリエーション史」の前半で最も革新的な変化とされたのは、印刷技術の誕生です。1445年にヨハネス・グーテンベルクが発明した活版印刷機により、人々の生活は一変していきます。聖書や本を読むことは王族・貴族に限られていましたが、それらが大量に複製されていくことで、市民に行き渡り始めます。人々が知識という力をつけることになり、一人一人が主権者であるという民主主義の考え方が社会に広まっていくきっかけとなりました。
今回の授業では、旧石器時代からルネサンスまでの軌跡を辿ることで、人類はどのようなタイミングで、どのような発明や変化が生まれたのかを、テクノロジーとクリエーション視点から学びました。次回の「高速クリエーション史」ではどのような「ターニングポイント」に出会うことができるのでしょうか。
執筆・写真:松村ひなた
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