REPORT

越境文学サロン 第1回


生きられた経験を持ち寄る機会
「越境文学サロン」とは何か?クラスページでは、次のように紹介されています。「母語ではない言語で書かれた文学作品は、越境文学と呼ばれています。文学とは、人が生み出すもの。そうせざるを得なかった、或いは、そう選ばれた、越境というスタイルによって、その当然のことが一層迫ってくる感覚にもなります。国を越え、またがりながら言葉を紡ぐ。そこに、その人がいる、いた。そういうことが、文学足らしめているし、その生きられた経験というものが文学性を帯びているとも思います。一方で、文学そのものが、越境性を宿しているとも言えます。なぜなら、国や時代を越えて、翻訳や流通などを経て読み継がれていくものだからです。『越境文学サロン』は、そういった文学の越境性や私達自身の越境性に着目し、読書体験を深め広めていくための機会です。」

聞き馴染みのないテーマであるにも関わらず、多くの申し込みを頂いたこのクラス。講師を勤めるのは、文筆家、編集者、翻訳家のアレクサンドラ・プリマックさん。ロシア生まれ、ヨーロッパ育ちの彼女は、2018年から日本に移住し、日本の小説家になることを目指し活動しています。「文学は私たちの人間性を持ち出すものであり、お互いの理解を深めるもの」と、その普遍的でありながら現代的な必要性を語るアレクサンドラさん。

その舞台は、目白庭園の「赤鳥庵」。大正7年に鈴木三重吉が創刊した児童文学誌『赤い鳥』にちなんで名付けられた建物です。鈴木は夏目漱石に師事し、「綴方教育」などを通して日本の児童文学に大きく貢献しました。「越境文学サロン」は、こうした歴史や精神に触発されて生まれました。そして、歴史ある建造物が、まさに越境文学のためのサロンとなります。



それぞれの文学との出会い
この日の授業は、ゆるやかな自己紹介からスタート。アレクサンドラさんは、生徒ひとりひとりの話しに耳を傾け、それぞれが好きな文学や作家、そして文学に興味を持ったきっかけ等を深堀していきます。そして、自身の文学との出会いやロシア文学への想い、そして日本文学との出会いを皆に共有してくださいました。

その後、『鴨川ランナー』を開き、物語の冒頭を紐解いていきます。第2回の授業には著者グレゴリーさんご本人が登壇してくださることを踏まえ、想像を膨らませどのような質問をしたいか、どの点が気になるのか、皆で議論していきました。



『鴨川ランナー』を読み解く
クラスの第1回から3回までをターム1とし、グレゴリー・ケズナジャットさんの著書『鴨川ランナー』を読み込んでいきます。

芥川賞候補者であるアメリカ人のグレゴリー・ケズナジャットさん。『鴨川ランナー』はケズナジャット氏のデビュー作であり、来日時の経験を描いた作品です。二言語使用や異文化の体験を始め、エキゾチシズム化の危険性や異国フェティシズムなど、様々な問題を取り上げているテキストを通して「越境性」の定義を皆で考えていきます。

第2回の授業には著者グレゴリーさんご本人が登壇してくださることを踏まえ、想像を膨らませどのような質問をしたいか、どの点が気になるのか、皆で議論していきました。

執筆・撮影:松村ひなた