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「Beyond the Music」第6回 常田俊太郎さん

「Beyond the Music」は、音楽を通じて、言語、文化、歴史、物理、民族、テクノロジーといった、他の領域への学びを深めていくクラス。WONK/millennium paradeキーボーディストの江﨑文武さんが総合ディレクターを務め、授業ごとに様々なジャンルの方をゲスト講師に迎えます。

2021年7月25日(日)は、第6回授業を開講しました。今回のテーマは「芸術と経済」。ゲスト講師に株式会社ユートニック代表取締役でありミュージシャンの常田俊太郎さんをお迎えし、切っても切れない「アーティスト」と「お金」の関係について一緒に考察していきます。

講義の前に、まずは全員の自己紹介からスタート。ゲスト講師の常田さんは東京大学工学部を卒業し、戦略系コンサルティング会社に入社。その後、アート・エンターテインメント領域のプロデュースやコンサルティングを中心とする会社を設立されています。それと同時に、ヴァイオリニストとしてmillennium parade、King Gnu、加藤ミリヤらの作品に参加するなど、ミュージシャンとしても活躍。そんな常田さんが、4歳から始めたヴァイオリンでミュージシャンという職業一本を目指すのではなく、一般大学、一般企業へ進路を決めた背景には、「当時は少しませていたんですが」と前置きしつつも、まさに「アーティスト」と「お金」の関係を顧み、「無理じゃね?」と率直に思ったからだそう。

講義本編では、芸術と経済、それぞれの歴史を参照しながら、双方の関係を紐解いていきます。「ルネサンス期のアーティストは現代のサラリーマンに似た形でお金を稼いでいたんです。それには市場規模が関係しています。」「江戸時代、葛飾北斎の版画に芸術的な価値は見出されていなかったんです。みんな引越しに使う包み紙として使っていたくらい。」「レコードからCD、そしてストリーミングサービスへ。複製できるメディアができたこと、またその変遷によってアーティストの収益モデルも大きく変わってきています。」など。それぞれの時代における具体例を取り上げながら講義が進んでいきます。

時には、WONKの活動形態を実例に、自身が作品の権利を管理するこれからのアーティスト像について、さらには、複製できないデジタルデータを売買するシステムを実例に、発展が見込まれるこれからのオンライン上でのアートビジネスについてなど、当時の常田さんはどこか「無理」を感じていた「お金」の新たな可能性まで、講義のトピックが広がっていきました。

「アーティストにとって、またはアーティストを支える立場にとっても、芸術と経済、どちらにも精通し、その二つを繋げて考えることがこれから必要不可欠。だけど、今の日本のメジャーな世界でそういう存在は非常に限られているように思います。だからこそ、今回のテーマに興味を持ってくれる皆さんはとても貴重な存在。今日をきっかけにさらにこのテーマを深めてくれれば嬉しいです。」最後に常田さんからのこんなメッセージで講義は終了。その後も受講生から常田さんや江﨑さんへ、そして受講生同士で今回の講義について感じたことをシェアしながら、会場全体で交流が深まっていきました。

 

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